2/26/2018

春・・・・かも?

明日から気温が「厳しく下がる」とニュースでは言っています。もう3月もすぐそこだと言うのに。

でも数日前、少し寒くはありましたがお客様をストウ(Stowe)のガーデンにご案内して春の訪れを感じてきました。寒い日でもお天気が良く、雲一つない冬晴れ(?)です。




ストウと言えば 、風景庭園の最たるもの。日本でイングリッシュ・ガーデンと言えば特に19世紀に一般のひとの間で浸透した‘コテージ・ガーデン’を指しますが、イングリッシュガーデンと言っても長い歴史の中では色々なスタイルがあってその中でも風景庭園(English landscape gardens)は代表的庭園スタイルと言えると思います。

それまでのフランス、イタリアからやってきた幾何学模様でお馴染みのガーデンデザインとは逆に、自然体で人の手が全く加えられていないようなガーデンは(でも実は今まで以上に人の手が入っているのですが)特にクロード・ロレインなどの風景画がヒントになっています。

それが今度は18世紀の終わころにはフランス風景庭園などヨーロッパの庭園デザインに影響を与えました。

眺めを尊重して作られたので、風景庭園には邸宅に続くまっすぐな道や、湖、そのほとりを歩くための曲がったこみちや島、橋、そして遠くから眺める以外には何も用をなさない建物や廃墟(フォリー)などが、ずっと前からそこにあったかのように作られたのです。それが現在の多くの公園の基盤になっているとも言えるでしょう。




(下の写真は先日あられが降った時に写したものです)




ストウに関してはお話しすることが沢山ありますので、いつか詳しくご紹介しますね。私は仕事で訪れたのは4回しかありません。そのひとつひとつが鮮明に記憶に残っています。その時のお客様のこと、どうやってあの広い敷地を周ったか、お天気のこと・・・・・ゴルフで使うバギーのようなものを初めて運転したのもここでした。ラッキーにも今はストウから車で20分くらいのところに住んでいるので、個人的にこれから訪れる機会が多くなると思います。

今はストウ・スクールという私立の学校になっている家(下の写真)は1717年にコバム子爵によって建てられたもの(時々一般公開している)。そしてガーデンをデザインしたのは風景庭園と言えばこの人と言われるケイパビリティ・ブラウン(ランスロット・ブラウン)です。

ここには当時、ヨーロッパ中から王侯貴族をはじめ政治家、建築家、芸術家などが遊びにきたようで、コバム子爵は そういう人たちの好みに影響を与えることが好きでした。いわゆる‘トレンド・セッター’と呼ばれる人で(流行を作り出す人)彼の場合は風景ガーデンを広げることに貢献しました。




 庭は現在はナショナル・トラストが管理しています。先日、あられが顔に当たって歩くのも困難、一か所だけで退散した「スノードロップ・マップ」にある場所を今回は全て周ってきました。お客様も今回はスノードロップを見るのがご希望でしたので、そろそろ終わりかけてはいましたが満足されたようです。












 遠くからでもすぐにわかる野生のシクラメンのピンクの鮮やかなこと。





これからはクロッカスや水仙が花開く時期です。でもこの寒さでは芽を出したくても遠慮がち。今は花屋やスーパーで買ってくる一束1ポンドの水仙を花瓶に入れて春の訪れを待っているところです。

2/19/2018

ダルメインでマーマレードの審査

「世界マーマレードアワード&フェスティヴァル」のアワード審査のために開催地であるカンブリア州のダルメインの館に行ってきました。
 (日本では一般的にダルメインと呼んでいるので私もこれからはデイルメインではなくダルメインと書くようにします)

ダルメインの館は最古の部分が12世紀という歴史ある建物で、「マーマレードアワード&フェスティヴァル」はそこに住むジェイン・ヘイゼル・マコッシュ夫人が初めてから今年で13年目を迎えます。昨年NHKのテレビで彼女の1年を紹介した番組が放映されたのでご存知の方もいらっしゃるでしょう。今年は3000以上の応募があったとかで二日間泊りこんで完ぺきに缶詰め状態で審査に集中しました。




16名の審査員は、800個のアーティザン(職人)の部門を担当しました。ふたりづつペアーを組んで、それぞれのマーマレードを深く審査します。そして味、香り、見た目、皮の入り具合などのカテゴリーごとに点数がつけられ、最後にはコメントと共に「改善するにはどうしたらよいか」の提案も加えられます。













 20点満点のうち合計得点が18点以上になれば、金賞ということで特別なテーブルに移されます。

金賞を獲得したマーマレードたち。



昼食の45分を除いては審査に没頭。おやつに出たスコーンはダルメイン特性です。マーマレードの甘さに体中が浸かっているので、出来立てセイヴリーのスコーンのおいしかったこと!食べている間も審査は続行です!





アマチュアの部門は隣の部屋で何日も前からですでに審査が始まっていました。その数は2200個!!!






イギリス各地から集まった審査員たちは食のジャーナリストや有名シェフ、パティシエ、有名食品店のバイヤー、大手スーパーの食のコンサルタント、ジャム専門家などですが、それぞれ個性的。今年は大丈夫でしたが、意見が合わずに険悪な状況になることもあるとか。二日間寝起き、3食(そしてお茶の時間)を共にすれば、そこには不思議なコミュニティが生まれます。審査が終わった途端に急ぎ足でそれぞれの家路につきましたが、今年はジェインさんのお人柄を反映するかのように審査員は意気投合して真剣な審査の時間の他は冗談を言い合ったりして笑いが絶えることはありませんでした。

ダルメインはそのガーデンでも 知られていてジェインさんが庭を案内してくださいました。





ご主人のお母様が書かれたダルメインの庭に関する本。



丁度スノードロップが咲いていました。






私はここ15年程毎年この時期にマーマレードを作っていますが、マーマレードは実に不思議なエネルギーを私に与えてくれます。寒い冬の夜に湯気立つキッチンでオレンジの皮を刻み、食べてくれる人の顔を想像しながら過ごすひと時は私にとってまるで一年分のエネルギーを補給してくれるかのように大切な時です。

ここ数年日本からの出品も増えました。他の日本の柑橘類や果物を加えたりして審査員の間では日本の柚子マーマレードは好評です。出品した人、会社の名前はわからないようになっていますが、柚子ではなくとも味見した途端に「これは日本のもの!」と言い当てる目利きの審査員もいます。日本人の繊細さが出るのでしょうか?

日本でもマーマレード熱は上がる一方で、来年5月には愛媛県の八幡浜市で「ダルメイン・マーマレードアワード&フェスティヴァル」が開催される予定です。

今朝、産経新聞に原稿を提出。リレーコラムでは今回は、「ダルメイン・マーマレードアワード&フェスティヴァル」について書きました。掲載は3月6日の予定です。

明日からは泊りがけでジャム講座を受ける方のご案内でデンマンカレッジに行ってきます。なんだか2月3月の仕事はマーマレードに始まりマーマレードに終わりそうです。



2/12/2018

ナショナルトラストの建物が閉館のこの時期。

ナショナルトラストが管理する建物のほとんどは冬場は閉館しています。それは、観光客が少なくなるこの時期に掃除、修理、保存対策などをしなければならないからです。ナショナルトラストが存在するの第一の目的は維持、保存ですので冬の間閉館ということもうなづけます。

ところが冬でも楽しめることがあるのです。それはガーデンのみオープンされているところ、そして ‘Behind the Scenes’ と言って閉館の時期の活動(掃除や修理など)を週末など特別な日にのみ一般に公開される時です。

私の家から車で簡単に行けるところにナショナルトラストが管理する物件がいくつかあります。昨日はそのうちの2件、クレイドン・ハウスとストウに行って来ました。ここを選んだ理由はふたつあります。まずクレイドン・ハウスはスノードロップが咲くガーデンのツアーが行われていたこと、そしてBehind the Scenesで保存責任者が案内してくれることです。

ストウのほうは、そのスノードロップに 「ストウドロップ」とニックネームがついているほど知られているからです。そしてこの時期、とてつもなく広い敷地のどこにスノードロップがあるか、ちゃんと地図が用意されています。

まずはクレイドン・ハウスです。ここははクリミア戦争で負傷した兵士の看護や看護婦の養成に貢献したフローレンス・ナイチンゲールの姉が嫁いだ家で、フローレンスも特に晩年はクレイドン・ハウスに頻繁に訪れていたようです。




Behind the Sceneについてはいつかブログに書きたいと思いますが、ブラシを使って5000冊もの本を一冊ずつ丁寧に埃をおとしたり、家具や絵画も目に見えない埃や湿気、虫によるダメージを取り除いたり、それは大変な作業です。表には出ないナショナルトラスト、そしてボランティアのひとたちの活動の大切さをしみじみ感じました。




ここの庭では「沢山」とは言えませんが、ちょうど見ごろのスノードロップがまぶしいくらいに真っ白い花を咲かせていました。









丁度咲き始めたウィンター・アコナイトの黄色もまた鮮やかでした。



ストウは建物は現在は学校になっているので普段でもナショナルトラストとしては公開していませんが、風景庭園で有名な庭は一年中オープンしています。




スノードロップの地図にあるところ全てに行くことは一日なければ無理。しかも入口から一番近い湖に向かっている途中、あられが降ってきました。そして風も・・・・そのあられが顔にあたってとても痛いのです。あられに攻撃されたのは初めて!やっとたどり着いたのですが、「今日はここまで」と、すぐに退散してきました。









一度はやんだあられもその後、もっと沢山振り出しました。「お茶で体を温めてから帰りましょう。」と広いレストランに行ったら長蛇の列。みんな考えることは同じですねー。お茶もあきらめて家路についたのでした。

2/07/2018

動物救急サービス。

世界中で寒波が訪れているようです。テレビのニュースではロシアの大雪の模様が放映されています。私の住む地域でも雪は降りましたが積もるまでにはいきませんでした。

日曜の朝、この寒さの中を突然おにぎりを持って息子の家から車で15分のトレントパークという公園へ行くことを思いつきました。きっと私にとって今年初めてのスノードロップが見られるかも?と期待して。

ありました、ありました。







ベンチに座って凍えそうな手におにぎりを持って震えながらのピクニックでしたが、ちょっとはお花見気分を味わいました。

さて、この日は公園でうれしい発見がありました。それは野生動物を保護しているサンクチュアリーです。病気やけがをしている野生動物を保護するところです。ここにいる動物は鳥類から豚や鹿、うさぎなどさまざまですが、元気になれば野生に戻したり新しいオーナーを見つけたりします。完璧にチャリティで、働く人は全てボランティア、運営費はドネーションがほとんどです。少しの入場料を支払って中に入ってみました。








子供の遊び場もありますし、動物たちは自由に歩き回っています。動物園の動物とは明らかに違います。野生の動物を動物園で飼うこと自体不自然なことですが、ここの動物たちは元気になれば野生に戻ることができることをまるで知っているようにハッピーな顔をしています。ホント。

けがが完治する可能性のない動物は、一生ここで暮らすか他のサンクチュアリーに移されます。

そしてある一角で見つけたのが、野生動物救急サービスセンターです。車に轢かれた動物や病気の野生動物を保護するための救急サービスのオフィスで、救急車が待機しています。




創設者は動物福祉に貢献したことが認められエリザベス女王から勲章をいただいています(M.B.E.)。



イギリスでは助けが必要な野生動物を見つけた場合は、さまざまな動物保護団体がありますのでそこに連絡すれば引き取りにきてくれます。

ずっと前、娘がまだ小学生の時に公園で倒れているきつねを見つけました。当時は携帯もありませんでしたので、彼女のジャケットにきつねをくるんで車で獣医さんに連れていきました。残念ながら回復の見込みはないとのことで、安楽死という結果になりました。野生の動物は菌を持っている可能性があるので、本当は私たちのとった処置は適当ではなかったようです。知っていたら上記の救急サービスに連絡したのですが。その時の獣医の料金は無料でしたが、高い請求書が送られてきたという話も聞いています。

また、家の近くで迷い犬を見つけたことがあります。飼い犬だったことはほとんど間違いないのですが、捨てられたのか、単に迷っただけなのかはわかりません。でも放っておくことはできませんから、家に連れて帰り動物愛護協会に電話しました。丁度週末だったのでオフィスには人手がなく、「警察に連れて行ってください。」と言われました。えっ?警察?あのー見つけたのは泥棒ではなくて犬なんですけどー。

まあ、言われた通り近くの警察に連れて行ったところ問題なく引き取ってくれました。月曜になったら近くの愛護協会が犬を引き取りにきてくれるとのこと。


子供たちが小さかった頃、よく動物園に連れて行きました。でも今は孫を動物園に連れて行く気持ちはありません。前述しましたが、動物園で人間が見物するために動物を育てることは不自然なことと思います。動物園でおりの中で自由を失われた動物を見て単に「可愛いね!」と子供を喜ばせるより、サンクチュアリーなどに連れて行って野生動物も含め動物を愛する気持ちを小さいころから学ばせることは大切なことだと思います。動物を知ることは子供の長い人生には宝なのですから。

http://www.wras-enfieldwildlife.org.uk/index.html