8/27/2020

もうすぐベリーの季節

 木々の花や実が季節と共に徐々に変わっていく姿を見るのも散歩の大きな楽しみです。ロンドンにいたときはせいぜいブラックベリーを積むことしかあまり季節感を感じていませんでしたが、引っ越してからは誰でも行ける野原や公園にふんだんに果物や実がなっているので、余計にそう感じるのかもしれません。美味しそうなサクランボは鳥と競争するのも無駄とわかりました。丁度食べごろになる寸前に鳥がゴッソリ食べてしまいました。まあ、自然に生るものは鳥が権利を持っていても仕方ありません。


エルダーの実


プラム




ブラックベリーが熟すのはもう少し後



スローの実



リンゴ



栗ももう少し


ここ5か月以上もほとんど町に出ることもなく、ましてや都会に出ることは一度もありませんが、こうやって自然とお付き合いすることの楽しさを知りました。



8/22/2020

イングリッシュキッチンのマーマレード

 1月にセヴィルオレンジを冷凍にしておいた分が残っていたので、昨日マーマレードを作りました。朝ごはんは自家製のミューズリにトーストと毎日決まっています。そのトーストにキュッと少し酸っぱいマーマレードをつけていただくのが私の一日の始まりです。マーマレード作りは毎年1月から2月にかけて行いますが。この期間は家じゅうがオレンジの香りに包まれて幸せな気分になります。

今年はコロナの影響で自宅待機をしているご近所さんにも多く配りましたので、在庫も例年より早く少なくなってきていたところでした。



冷凍でもけっこうおいしくできました。




イングリッシュキッチンというブランド名で日本でマーマレードを販売していらっしゃる林敦子さんはダルメインのマーマレード・アワードでは毎年ゴールド賞をいくつも獲得されているお馴染みの顔です。日本ではネットやイベントの他、製造場所で販売していらっしゃるようです。日にちが限られていますが、製造場所で買う場合は敦子さんの熱いマーマレード話が聞けるかも?毎年マーマレードの研究でイギリスを訪れる際にお会いしていますが、研究成果が十分表れていて、イギリスでも彼女のマーマレードのファンが多くいらっしゃいます。

https://www.englishkitchen.jp/blank-3


そのイングリッシュ・キッチンのマーマレードの中でも私が特に好きなのが黄色梅柚子ジンです。



マーマレードがお好きな方にはもちろんですが、今までマーマレードはあまり食べていなかった方にもお勧めです。マーマレードは大量に作るものと、少量ずつ作るものの違い、作るひとの好み、個性が表れるので自分に合ったマーマレードに出会った時の歓びはひとしおです。

8/18/2020

ユーモアはイギリス人には欠かせない生活必需品

 北海道にいる妹が、北海道新聞の記事を送ってくれました。「首相官邸の猫が引退」という記事です。首相官邸の猫は ‛ネズミ捕獲員’ という役職を持つ公務員です。これまでに捕獲員長の引退はニュースで報道されていて、別に珍しいことでもなく政治家が辞職したり退職したりするのと同じ感覚で「あっ、そー」と聞き流していましたが、日本から送られた記事を読んで動物を公務員にしている国も少ないのでは?と思いました。





パーマストンという名のこの猫は「そろそろ田舎に引退したい」という理由で退職願を出したとか。これまでにもグラッドストーン(首相)やネルソン(海軍提督)、ウィルバーフォース(奴隷廃止を唱えた政治家)などの名前が猫のつけられていますが、役職(?)としての歴史は古く16世紀に遡ります。

パーマストンをはじめ、近年の捕獲員は動物保護施設であるバタシー出身で、高齢になると田舎で引退生活を送ることが多いようで、パーマストンも引退後の暮らしを考えていたのでしょう。(笑)記事にある特技として、「寝たふりをして外国高官の会話を盗み聞きすることだった。」というところが面白いですね。それは大臣たちが最も願っていることでは?


パーマストン自身のツイッターもフォロワーが11万人以上いるそうで、ウィキぺディアもまであるくらいですから、その人気は大変なものです。

      https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%B3_(%E7%8C%AB)

ネズミ捕獲長に関するウィキペディアはこちらです。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%96%E7%9B%B8%E5%AE%98%E9%82%B8%E3%83%8D%E3%82%BA%E3%83%9F%E6%8D%95%E7%8D%B2%E9%95%B7


2017年、パーマストンはヨルダンの在英国大使館のネズミ捕獲長を任命しました。彼の名はアブドゥーンのローレンスで、これはアラビアのローレンスに因んだ名前です。この猫もレスキューされた猫だとか。



イギリス人の生活に中には、知らないうちにユーモアが入り込んでいるようです。





8/13/2020

線路の建設にちょっとだけいい知らせ

 前回は、ウィンズロウの駅、鉄道の線路について書きました。その翌日、野原に車が乗りこんで、工事らしいことが始まりました。



その翌日からは、もっと大掛かりな工事の準備です。



しっかりした仮の柵。



写真にある大きな木が、線路拡張のために切り倒されてしまうのは実に悲しいことです。ついに思い切って作業員に尋ねてみました。

そしてわかったことは、私の心の重い影をだいぶ取り去ってくれました。結論から言えば、木は一本一本チェックして、大切な木はなるべく伐らないで、残しておくこと。そして工事の際の騒音で住民に迷惑をかけないために、防音壁をまず造るとのことでした。これでかなり工事が長引くことがわかってがっかりもしましたが、木の伐採は最小限にすることがわかってホッとしました。

散歩で出会う人たちも、みんな心配しているので早速教えてあげようと思います。



8/08/2020

ウィンズロウの駅

 私の住む町は国鉄の駅がありません。ロンドンへ出るにはミルトンキーンズかブレッチリーまで車で行くか、バスも出ていますが色々周っていくのでずいぶん時間がかかります。不便と言えば不便ですが、慣れてしまえが「こういうもの。」という諦めが先にたってそれ以上考えません。

でも昔は、この小さな町にちゃんと駅がありました。1850年にオープンしたしたウィンズロウ駅ですが、1960年代にイギリス中で行われた収支改善計画の結果、全部で6400キロの路線と3000の駅が閉鎖されてしまい、ウィンズロウの駅もその一つになってしまいました。

ところがウィンズロウの駅が再開されることとなりました。これでオックスフォードまでは30分弱で行けることになります。「便利になるだろうなー」と思っていた矢先、実は以前駅のあった場所ではなく、他に再建されるという話を聞きました。以前の線路は今は草が生えて、散歩コースになっています。路線も大幅に拡大されるということです。

それで、私たちの毎日の散歩コースに大きな影響が出ることになりました。野原には大きな木がいくつもあって野生の動物、鳥が住んでいます。そこが一掃されるという話を聞きました。

木の調査をしているとか。



草上には生々しい感じさえ受ける白いマーク。


何の境界になるかはわかりませんが、棒が直線に建てられました。



線路に近い大きな木が切られると思うととても悲しくなります。



今年が最後になるのが解っているのでしょうか?今年は特にたくさんの実をつけてくれた大きなリンゴの木。まだ少し早いのですが、一つだけ食べてみました。その甘さ、香りにびっくり。


いつ閉鎖されるかわからない野原を「今日が最後になるかも?」と思いつつ毎日通っています。

8/05/2020

ストラディヴァリウスのバイオリン

ちょっとしたことがきっかけで、ストラディヴァリのバイオリンについて興味を持ちました。アントニオ・ストラディヴァリは17世紀後半から18世紀前半にかけて息子ふたりと一緒にイタリアのクレモナで弦楽器を作っていた人です。当時は音楽家が急増し、大量に楽器を生産することが当たり前だった時代ですが、ストラディヴァリはあくまで質に拘り、もちろん音色も去ることながら、全体の形、表面のはめ込みを施したデザインは美術的にも高い評価を得ています。近年に至っては親子三代の時代に作られた弦楽器ストラディヴァリウスは世界一高価な値段がついています。この時代に作られたものは1100挺と言われていますが、現存しているものは約650挺。そのうち希少価値から言ってバイオリンよりもヴィオラやチェロが特に高額な値段がついています。

2011年に日本音楽財団が、東北大震災の被害者のための寄付金を作るために売りに出されたストラディヴァリウスの「レディ・ブラント(特に優れたバイオリンには愛称がついています)」はオークションの結果史上最高額、日本円で12億7420万円で落札されました。



ストラディヴァリウスのバイオリンに関しては時々盗難事件で新聞に載ることがありますので、一般の人も「すごいバイオリン」ということは知っています。そんなニュースを目にすると、まるで人間の誘拐事件?と思うほど。

イギリスでも2010年に、カフェで盗まれました。でも、売るためにストラディヴァリウスを盗むのはナンセンスです。なぜならばこれほど有名なバイオリンですから、すぐに警察に知れてしまいます。このロンドンの強盗もお金目当てだったようで100ポンドで売ろうとしたそうですが、すぐに逮捕されました。そしてそのバイオリンは持ち主に無事戻り、3年後に1380万ポンド(20憶円)で売られました。

今でも話題になっている盗難事件がありました。1936年にポーランド人で、多くのユダヤ人を救い、パレスチナ・オーケストラを設立したバイオリニスト、ブロニスラフ・フーベルマンがカーネギーホールでコンサートをしていた際に彼のストラディヴァリウスが楽屋から盗まれました。今度はすぐに見つかることはなく1947年に亡くなったフーベルマンは、ついにこのバイオリンと再会することはありませんでした。盗んだのはワシントンD.C. 国立交響楽団 のメンバーだったこともある人。50年間妻には「100ポンドで買った」と言い続け、ついに1985年に死ぬ直前に告白しました。バイオリンのケースを開けた妻は、そこに隠されていた当時の盗難に関する新聞記事を見て初めて夫の秘密を知ったのです。

それからこのバイオリンはどうなったでしょうか?ロンドンの保険会社ロイズはすでに盗難があった後にフーベルマンに3万ポンドを支払っていますので、所有者はロイズになります。そしてバイオリンを届けた妻に「見つけた人の権利」としてロイズからお礼金26万3000ドル(2760万円)が渡されました。

その後の「Gibson ex Huberman」と呼ばれるこのバイオリンの行方ですが・・・・。ロイズからバイオリンを買ったのはイギリスの有名なアマデウス弦楽四重奏団のバイオリにストであったノーバート・ブレイでした。ブレイニから買ったのが現在世界的に最も有名なバイオリニストのひとりに挙げられるジョシュア・ベルです。

ロイヤル・アルバートホールでのコンサートでロンドンに滞在していたときのこと。コンサートの前に弦をピックアップするために立ち寄ったのがバイオリン専門店でした。そこで初めて目にしたのがこのストラディヴァリウスでした。その後、ドイツの収集家に売られることを聞いた時にベルは涙を流したと言われます。「このバイオリンは見て楽しむのではなく、弾くように作られている」と。

そして自分の持っていたストラディヴァリウスを売り、すぐにブレイから400万ドル(4憶2000万円)で買い取りました。それは1713年、アントニー・ストラディヴァリが黄金時代と呼ばれる時期の1713年に作られたストラディヴァリウス5~6挺のうちの一つです。
ジョシュア・ベルのデビューは1985年で、それは彼が17歳の時でした。これは偶然にもフーベルマンからバイオリンを盗んだ人が死んだ年で50年の年月を経てバイオリンが世に再び現れた年でもあります。またジョシュア・ベルがデビューした場所はカーネギーホールでした。それはこのバイオリンが盗まれた場所です。





ストラディヴァリウスのバイオリンの表面はスプルースという木でできています。この木は切られてから330年後が一番良い状態になるそうです。だからストラディヴァリウスのバイオリンは今がちょうど良いコンディションであるということになります。そこにストラディヴァリの人気の秘密があるのかもしれません。

さて、このストラディヴァリウスのバイオリンとイギリスとの関係ですが、ストラディヴァリウス三大名器のうちのひとつが、オックスフォード大学の博物館アシュモリアン・ミュージアムにあります。しかも、値段から言うと世界一高値がつくだろうと言われている代物です。ほとんどオリジナルに近い状態で、これまでに弾いた人もあまりいなかったそうで、アントニー・ストラディヴァリアが死ぬまで手放さなかったというバイオリンです。またスララディヴァリウスのバイオリンの原型になっていたという説もあります。このバイオリンの名は「メサイア」。それは、「ユダヤ人が待ち焦がれていても現れないメサイア(救世主)のようだ」と、ある人がとコメントしたことからつけられた愛称です。




アシュモリアン博物館は無料で見学できますので、オックスフォードに行かれたら是非立ち寄ってみてください。8月10日からオープンです。






8/02/2020

シールディングの生活は続いても楽しく暮らしています。

8月1日から、持病などで特にコロナウィールスから身を守らなければならない人たちのシールディング生活が解除となり社会的距離を置きさえすれば外出ができるようになりました。とは言え、こればかりは個人差があります。「待ってました!」と早速家族や友人に会いに行ったりする人もいれば、今まで通り家でじっとしている人もいます。

我が家はどちらかと言えば後者のほうで、シールディングをしている人と一緒に暮らしている私も散歩以外は家にいます。それがさほど苦痛ではなく、動いていなければ気が済まないと思い込んでいた自分の正体(?)に驚いています。

その大きな理由としてお隣さんとのお付き合いがあります。今年初めに引っ越してきたお隣さんは友人同士の女性がふたりで住んでいますが、ロックダウンが始まったころ、スーパーからの配達の予約もできずに困っていた時にずいぶんお世話になりました。そして今度は私がお返しする番です。一か月くらい前から彼女たちの家の大改築が始まり、2週間ほど前にまるで爆弾を落とされたようにキッチンが完全に壊されました。もちろんお料理もできません。

そこで私が夕食を作って届けています。ひとりはヴィーガン、ひとりはお肉大好きの人たちですが、私はヴィーガン料理しか作らないので、彼女たちの生活もヴィーガンになっています。







一人はウェディングやイベント会場のお花をアレンジする仕事をしています。車で10分のところにスタジオがあるので、そこに集められたお花の中から時々我が家にもお花を届けてくれます。









でも何と言っても楽しいのは、彼女たちの生活がまるでいつもコメディを見ているように笑わせてくれること。お花のアーティストと国の医療機関(NHS)で働く全く違う性格の女性二人が一緒に住んで、それぞれの一日を終え、ひとつの場所で合流する・・・・私たち夫婦ふたりだけの静かな生活に慣れてきたころにやってきた笑いの旋風。パブやレストラン、劇場、買い物には行かなくても楽しく暮らせるのは彼女たちのお蔭かも?