4/16/2017

イースターエッグ論議

イースターの食べ物のひとつホットクロス.バンはキリストの苦難をしのんで断食をおこなう40日間が(Lentと言って四旬節)終わるGood Friday(キリストが十字架にかけられた日)に食べます。キリストに因んで十字架が上に描かれ、レーズンやカランツにシナモンやオールスパイスなどを混ぜた、どちらかと言えば菓子パンのようなものです。







イースターと言えば昔は卵の殻に絵を描いてプレゼントしたり、王侯貴族はロシアの宝石商ファバジェに宝石をちりばめた卵を注文したりと、卵がその象徴とされています。殻を破って出てくるひよこが、キリストの復活に似ているからだそうですが、今はチョコレートで出来た卵がほとんど。この時期になればスーパーの棚には色々なチョコレートの卵が並びます。そして子供たちには楽しみにしているエッグハントがあります。チョコレートでできた卵を探すゲームのようなもので、バケツを持った子供たちは嬉しそうです。







子供が多い地域では大人も一緒になって、中にはストリートパーティにまで発展しているところも。

 
 
 
 

さて、このエッグハント、今年はちょっとした騒ぎをもたらしました。ナショナルトラスト所有の多くの場所では毎年子供たちのためにエッグハントのイベントが行われます。今年も35万人が参加すると予想されていました。ところが、今年はロゴから‘イースター’の文字が消えて、Cadbury Easter Egg HuntsではなくCadbury Egg Huntsになったことから、騒ぎが始まりました。Cadburyはチョコレートを作っている会社で、ナショナル.トラストのEgg Huntsのスポンサーになっています。(イギリスのJohn Cadburyが1824年開業、2010年にアメリカの会社が買収)

Cadbury側が、「クリスチャンだけではなく、他の宗教の人たちや宗教を持っていない人たちにもアピールしたい。」と言ったことで、またまた騒ぎが大きくなりました。ヨーク司教は、「Cadburyの創設者John Cadburyは敬虔なクリスチャンだった。チャリティにも力を注ぎ、キリスト教の教えに忠実だった。キリスト教徒にとって最も大切な行事にイースターという文字が消えたのはCadburyのお墓に唾を吐くようなもの。」とかなりお怒りのご様子。

果はメイ首相までがコメント。「私は牧師の娘ですが、ナショナル.トラストの会員でもあります。イースターはクリスチャンにとってきわめて重大な行事です。伝統のEaster Egg Huntからイースターの名前が消えるなんて馬鹿げています。ナショナル.トラストは一体何を考えているのでしょう!」と強いお言葉。これに対してナショナル.トラスト側は「他の広告を見てもわかるようにイースターの文字は多く使われている。キリスト教を否定しているわけでは決してない。」と反論。

最近は宗教に関しては、イギリスでは過度に神経質になっている気がします。今回起こったエッグハントの論議は、現在でも一応クリスチャンの国であるイギリスで、胸を張ってイースターのお祝いをすることが何故疑問なのか?という人たちが「物申す!」と立ち上がった気がします。以前飛行機で敬虔なクリスチャンであったキャビンアテンダントが十字架のペンダントをしていたことでクビになるかならないかで問題になったことがあります。これも公共の場で極端に宗教を避けようという風潮から出た問題でした。

イスラム教徒はイスラム教の行事を、キリスト教徒はキリスト教の行事を、ヒンズー教徒も同じく、それぞれの宗教のお祝いをすることは自然なことです。大事なのはお互いの宗教、立場を理解しようという気持ちではないでしょうか。戦争やテロ行為は決して宗教が理由なのではなく、宗教という名のもとに他の宗教を否定することからおこると思います。どの宗教の神様だって、「私に従わないものは処刑する」なんて言うはずがありません。

日本では、今は考えられない論議かもしれません。でもこれからは益々国境のない世界が現実化してくる中で、日本にも将来さまざまな文化、宗教が入り込む可能性は十分あります。それは決してマイナスになることではなく、返って国際社会での日本であるには不可欠なことだと思います。でも日本の神道や仏教に因んだイベントはそのままの形で残るようにしたいものです。