6/23/2021

イギリスの紋章の話

 今月のオンライントークは「薔薇と紋章」というテーマで行いました。あまり日本の方には馴染みのないイギリスの紋章で、テーマを決めた時は「果たして興味を示してくださる方がいらっしゃるのか?」という心配がありました。でもイギリスと言う国を知る上で、またイギリスの歴史を見るためにはとても便利なものが紋章ですので、思いきってテーマにしました。

そしてお話しする内容を考えているうちに、この題を選んだことをちょっと後悔しました。というのは、紋章学というのは奥がとっても深くて一生かかって研究する人もいるくらいです。それを薔薇に関することも含め1時間でお話しすることは無理!と思ったからです。また、皆さんにわかりやすく説明できるかな?という疑問もありました。一応お話しすることを書き留めましたが、時間を計ったら2時間!どんどんカットしてやっと1時間15分くらいにまとめられました。

女王の紋章



ところが告知を始めてすぐに定員をオーバーするお申し込みで、追加トークの日を設けたくらいです。皆さんに興味を示していただいたことがとてもうれしく励みになりました。


イギリスでは紋章はエリザベス女王から直接管理を任されている紋章官が統括しています。紋章院総裁であるアールマーシャルは代々ノーフォーク公爵が受け持っていて、ノーフォーク公爵は公爵の中でももっとも位の高いプレミア公爵のタイトルを持ち、その下で13人の紋章官が仕事をしています。彼らは紋章院総裁の推薦で女王が任命します。そして女王のお供で大事なセレモニーに出席するのも彼らです。


この紋章官は、最初は伝令官で、戦争の時などのメッセンジャーがお役目だったので、それとわかるように派手な服装をしています。



紋章の大事なことは過去にあった同じ紋章を使ってはいけないこと、一目見て持ち主のことがわかるものでなければいけません。イギリスでの最古の紋章の記録は1226年のもの。紋章院には今までの全ての紋章が保管されていますから、新しい紋章を作る場合はそれらと同じもの、または似たようなものを作ることができないということです。そのアドバイスをするのが紋章官の仕事です。そんなにすごい専門知識のある紋章官ですが、紋章院から受けるお給料は年間2000円から7000円 !

最低賃金を支払わなければ訴えられる世の中です。雇い主の女王様は訴えられないのか?と思いますが、一応彼らはフリーランスということになっているので大丈夫らしいのです。その辺のところは彼らとボスの(女王様)間で特別な契約があるのかも?一年に2000円なんて、ロンドンの往復の地下鉄代がやっとという額!


ところで女王様の紋章にはスコットランドで使われる紋章と、スコットランド以外のイギリスで使われる紋章があります。下の写真はスコットランドで使われる紋章です。


スコットランドでのエリザベス女王の紋章


どこが違うのか?どうして?など皆さんと一緒に考えながら無事「薔薇と紋章」に関してのトークは終わりました。


今回は固いお話になってしまったので、次回はイギリスらしい田舎のひとつコッツウォルズを前編(7月14日)後編(7月17日)に分けて2回お話しします。お茶を飲みながらリラックスして聴いていただこうと思います。

告知を始めて24時間以内に前編が定員を超えてしまいました。そこで、少し様子を見ながら追加トークの日を設けることも考えています。

詳しくはCulture Tourism UKのホームページをご覧ください。

http://culturetourismuk.com/