今日はツアーのお誘いです。私が毎年、ガーデンツアーやアガサ.クリスティなどの企画ツアーのガイドをさせていただいている日本のワールドブリッジ社が昨年に引き続き今年も9月の終わりにツアーを企画しています。そして今年も私がご案内させていただくことになっています。
またローズ.オヴ.ザ.マナーでの3連泊、ミシュランスターを持つホテルのレストランでのコッツウォルズ最後の晩餐も組み込まれたツアーです。
ウィリアム.モリス(1834~1896)と言えば日本では壁紙やカーテン地のデザイナーで有名ですが、実際には多方面で今日の英国に影響を与えた人です。芸術家であり、作家であり、社会主義運動家でもあり、アーツ&クラフツ運動やラファエロ前派などの芸術運動の奨励者であり、古い建物や自然の保存のための運動をした人でもあり、またV&A博物館の相談役でもあり......5人分もの人生を60年ちょっとの生涯の中でやり通したひと。私はその中でも彼の思想、ユートピアへの思いに心が弾かれます。
そんなモリスの人生観を垣間見るには、縁の場所を訪ねることが理想です。ただ残念ながらほとんどの場所は個人で行くとなると、交通機関、時間を考えるととても難しい場所です。そんなところを少人数でバスで周るのが今回のツアーです。
ケルムズコット.マナーはロンドンを引き払ったモリがコッツウォルズに妻のジェーン、二人の娘、そして友人でもありラファエロ前派の画家であったロゼッティと一緒に住みついた館。モリスがここを初めて訪れたのは1871年のことでした。その時のことをモリスは「古代の平和がそのまま残る最も美しいところ」と言っています。皆さんも人里離れたケルムズコットマナーを訪れれば、その時の彼の言葉がよく理解できることと思います。
モリスはここで多くのデザインを考えました。ガーデニングが好きだった彼はイチゴを狙ってやってくる鳥をヒントに‘いちご泥棒’のデザインを思いつきましたし、庭を流れる川沿いのヤナギから同名のデザインを思いつきました。
モリスが「イングランドで一番美しい村」と言った南コッツウォルズの村バイブリーではゆっくり村の中を散策します。
そんなコッツウォルズを満喫していただくには毎日の観光の後のホテルでのひと時も楽しみのひとつ。このツアーは、コッツウォルズの中でも特に有名なマナーハウス.ホテル、‘ローズ.オヴ.ザ.マナー’に3連泊という贅沢なおまけつきです。昔の貴族の家に泊まっている雰囲気もさることながら、ミッシュランスターを持つホテルのレストランでの夕食はコッツウォルズ最後の晩餐に相応しいお食事です。
小さな村、アパー.スローターにあるこのホテルの周りの散歩も、是非経験してください。
小さな村、アパー.スローターにあるこのホテルの周りの散歩も、是非経験してください。
ロンドンではモリスが少年時代を過ごした家であり、今は彼の作品が多く見られるウィリアム.モリスギャラリーを訪れます。
またジェーンとの新婚時代を送ったロンドン郊外にあるレッドハウスを訪れます。ここは仲間との共同作業で建てられた家ですが、愛する妻、仲間とのひと時はモリスにとって人生で最高に幸せな時でした。
‘芸術は一部の人が楽しむのではなく、全ての人がその生活の中で見出すもの’
‘コミュニティの一員として生きることの大切さ’
‘『人生を楽しむと』いう芸術を学び、本当に自分にとって大切なものが何であるかを悟ったときにこそ、真の文明が始まる’
‘美しくもなく、必要でもないものは捨ててしまいなさい’
私はこの国に暮らしている間に自然にモリスに惹きつけられ、そして自分自身の人生にかなり影響を受けてきました。
余談ですが、このツアーを初めてご案内させていただくことになった直前にワールドブリッジ社から一冊の本が送られてきました。仙台で‘賢治とモリスの館’を経営、管理されている大内秀明さんの「賢治とモリスの環境芸術」です。偶然にも私は宮沢賢治の生き方にもとても興味を持っていました。宮沢賢治に関しての記録は多くは残っていません。この本は賢治の生徒のひとりから実際に話を聴いた人が発表された「聞書き」を基に書かれています。
この本を読んで賢治とモリスの生き方に共通するものを感じました。つまりは英国人と日本人の間にある共通性です。だからこそ、彼らからの考えが日本でも、そして英国でも違和感なく取り入れられるのだと感じました。
モリスと賢治は今生きている私たち、そしてこれから地球人として住む私たちの子孫に「幸せに生きるため」のヒントを多く与えてくれている気がします。
この本を読んで賢治とモリスの生き方に共通するものを感じました。つまりは英国人と日本人の間にある共通性です。だからこそ、彼らからの考えが日本でも、そして英国でも違和感なく取り入れられるのだと感じました。
モリスと賢治は今生きている私たち、そしてこれから地球人として住む私たちの子孫に「幸せに生きるため」のヒントを多く与えてくれている気がします。