カンタベリーはしばらく訪れていません。大聖堂も今は、大聖堂専用のガイドのみ案内ができるそうで、ブルーバッジガイドでも内部でのガイディングは禁止されています。そんなわけで中は日本語のオーディオガイドを借りて(有料)周ることになったのですが、それがどのくらい時間がかかるかもわからないために、その日の計画をはっきり立てることができません。
観光の後空港で終了の時は、飛行機の出発時間に遅れないように特に気を使わなければいけません。また、カンタベリーの町の城壁の中は車は進入禁止のところがほとんどですので、その日の運転手にも情報を提供しなければいけません。こうなったら事前にチェックするしかない!と、列車を使って行ってきました。
その日は雨。珍しいくらいジャージャー降っていて、うっかり水たまりに何回も足を突っ込んでしまい、歩くたびにく靴のなかでクッチャ、クッチャと音がします。
カンタベリー大聖堂はアングリカン.チャーチというキリスト教の宗派の(日本の聖公会、英国のイングランド教会もそのひとつの宗派です)総本山です。そして全てのアングリカン.チャーチの司教のなかでも最高のポジションを持つカンタベリー大司教の椅子(カテドラ)のある教会です。
今回は写真が見えにくくてごめんなさい。雨のために、カメラを構えただけで実際にレンズをはっきり見ずにシャッターを切ったものがほとんどです。
何と言ってもカンタベリーと言えば14世紀に書かれた‘カンタベリー物語’を思い浮かべる方が多いでしょう。時は1170年、ヘンリー2世の最も信頼していたトマス.ベケットの殺害が実にこの大聖堂の名を世界中にひろめることになります。
王の右腕でもあったベケットでしたが、カンタベリー大司教になってからは王の教会における権力を制限しようとします。王は、うっかり「低身分のベケットを追放できるものはいないのか?」と口走ったことで、4人の騎士が「王の命令」と受け止め、大聖堂でベケットを殺害します。
その直後に、ベケットは殉教者として‘聖’トマス.ベケットとなり、そのお墓には巡礼者が大勢訪れます。彼らはベケットのお墓に詣でることによって不治の病が治ったり、奇跡が起こると信じていたのでした。
そういう巡礼者の何人かが途中で出あい、大聖堂に一緒に行くまでの物語を描いたのが‘カンタベリー物語’です。彼らはベケットのお墓に続く階段を跪きながら登ったために、その石の階段はかなりすり減っています。
どこの教会もそうですが、巡礼者がおとすお金は(献金や、土産物)重要な教会の運営資金になります。英国一有名な聖者であるトマス.ベケットのお墓があることはカンタベリー大聖堂にとっては、非常に大事なことだったのです。
ところが、16世紀にヘンリー8世によって行われた宗教改革では聖者は反逆者とみなされ、修道院の崩壊と同時に聖者のお墓も破壊され、ベケットのお墓も同じ運命をたどることになります。ですから、今は「ベケットのお墓が最初作られた場所(地下)」「次に移動した場所」という場所のみが残っているだけです。
大聖堂の近くには、昔、お金のない巡礼者が泊まった施設もあります。下の写真はイーストブリッジ病院(病院とは言っても本来は宿屋や養老院などの意味もありました)です。
さて、私も日本語のオーディオを借りて実際に聖堂内を歩いてみました。とてもわかり易い日本語で、大満足。時間にすればゆっくり鑑賞して周りながら全部聞き終えるとしたら2時間(受付では45分と言っていましたが、どんどんとばさなければ無理)かかります。
町はローマ時代に造られた城壁の跡に14世紀~15世紀に建てられた防壁で囲まれています。
スタウア川に面したところには昔の職工人が住んだオールド.ウィーヴァ―ズ.コテージ(上の写真)があります。16世紀にフランスなどから宗教迫害を受けてやってきたユグノー教徒が機を織っていた家です(下の写真では左の白黒の建物)。遠くにダッキング.ストゥールが見えます(ボートの上あたりに突き出た椅子)。これは秩序を乱した人(多くは女同士の喧嘩など)をその罰として椅子に座らせ、椅子ごと何度も水に浸けるのに使われたものです。なんだかおもしろそう!やってみたい気も.....
さて、お客様をご案内した当日は雨もあがり、防壁の外で車を降りて気持ちの良い散策を楽しみました。
カンタベリーの後に寄ったリーズ城はとても美しく、駐車場からバスで敷地内を走り、お城に着きました。
こうして当日は、カンタベリーの町、リーズ城を見学した後、交通渋滞にも遇わず、飛行場に十分余裕を持って到着することができました。今回は特に歴史に興味を持っていらっしゃるお客様で、道中は歴史の話を私からのみお話ししたのではなく、お客様からも新しい情報をいただいて勉強になりました。下見の日はベチョベチョになって帰ってきましたが、二日後の本番の日は雨あがりの空気が新鮮に澄んでいて、気持ちの良い日になりました。