いつからか‘ガストロパブ’という言葉もできてきました。パブ料理が特に変わった大きな理由は、飲酒運転の決まりが厳しくなったからだと思います。日本と違って「一滴でも飲んだら運転してはいけません」というのではなく、イギリスでの飲酒運転の決まりはとても複雑です。100ミリリットルの血液内に80ミリグラム以内のアルコールが入っている場合は運転してもいいのです。ですから性別によって、また体重によってどのくらいのアルコールを飲んで運転してもいいかが違います。
西洋人は、日本人に比べ、体内でアルコールを分解する力が大きいと聞きます。でも、アルコールは完全に判断力、反射能力を低くしますので本当は日本のように「一滴でも飲んだら運転はしない!」というふうになればいいのですが。
飲酒運転に関しては、以前は制限がなかったものが最近はだんだん厳しくなってきたので、飲み物だけを提供するのではパブに来る人も少なくなる一方です。そこで食事に力を入れ出したのだと思います。食事が有名なパブはたくさんあります。そんなところは(特にロンドンは)値段も高く、以前のように「パブで軽く食事」なんて言えなくなりました。
ところが郊外に行くと、手軽な料金でびっくりするような美味しいパブに出会うことがあります。私は幸いに、昔シェフだった人、お菓子の専門家、グルメなど食に興味のある友人がけっこういますので、彼らにパブに連れて行ってもらえます。
先日はそんな友人の一人と、南ノースハンプトンシャーにあるWestonという小さな村にあるパブで昼食を取りました。藁葺屋根の家など古い民家が立ち並ぶ村です。
16世紀に建てられたThe Crown Innというパブは、外から見ると特徴のない建物です。通りに面して立っている看板もこれだけ。
後ろの駐車場が正面になっているようなパブです。
ところが中に入ってみて、そのあまりのモダンさに驚きました。そこには500年の差がはっきりと表れています。
友人はバターで揚げた地鶏チキンを。
私はスターターにあったおいもとネギのセイヴォリードーナッツをメインに、その他温野菜を更に注文しました。ふたつとも大当たり。友人も「ここはいつきても美味しい」と大満足です。
普段はデザートはパスの友人も、「ここのは特別」と生姜のパンナコッタとショートブレッドのクランブルを。
私はクランベリーソース添えのフランジパンタルト(グラウンドアーモンドをたっぷり使って焼いたタルト)を。全て満足。
料金は、普通のパブより幾文高めですが、その価値は十分あります。ガイドブックにも書かれていない、そして‘知る人ぞ知る’というパブに連れて行っていただくと嬉しいものです。返ってそういうパブの方が、「質、サービスに一生懸命」と感じられることも多いですね。