静かな土曜の朝を迎えています。早朝から降り出した雪で、車の少ない通りや庭にはうっすら雪のベールがかかっています。
すっかりご無沙汰してしまいました。雑誌取材のコーディネートの仕事をしていましたがその取材も昨日全て完了。ほっとしています。
さて、私のガイドとしての仕事はここ10年位は、ロンドンよりも郊外のほうがずっと多くなってきました。意図的になのですがロンドンがいやになったわけでは決してありません。ただ、特に夏場は人や車の多いロンドンで限られた時間内でガイドすることにストレスを感じてきたというのがその理由です。ですからスケジュールがびっちりつまったロンドン観光ガイドとしてのお仕事は今ではほとんど皆無です。
でも、実は私はロンドンが大好きなのです。どこが好き?と聞かれて一番先に出る答えは「思いがけないところに長い歴史の空間があること」。‘空間’と敢えて言ったのは、それは建物に限らないからです。
例えばセント.ジェイムズ地域にあるピカリング.プレイス(Pickering Place)です。ジョン.ロブの靴やさん、ロックの帽子屋さん、ベリー.ブラザーズ&ラッドのワイン商などの老舗が並ぶセント.ジェイムズ通りから細いパッセージが出ています。そこを突き進んで行ったところにある小さな広場がピカリング.プレイスで、1734年ベリー.ブラザーズ&ラッドのオーナーによってつくられました。
ここは多分ロンドンで一番小さな広場だろうと言われています。ですから昔は「秘密にしておきたいこと」をするのに良く使われたとか。クマいじめ、闘鶏や決闘などです。もっと昔はヘンリー8世のテニスコートの一部になっていたこともあります。因みにここで19世紀の中ごろにロンドンで最後のピストル決闘が行われました。このパッセージの両側の一部に今も残る16世紀の部分はそういった歴史の全てを見て来たのです。
またここにはアメリカ合衆国になる前にテキサスの公使館もありました。多くの車が行きかい、ショッピングの人でにぎわうセント.ジェイムズ通りからちょっと入ったところにあるピカリング.プレイスは正に私には都会のオアシスです。皆さんもきっとその静寂とした空間に驚くことでしょう。
そしてもうひとつ驚くことことは、ガス灯が今でも使われていることです。よく見ると昼間でもガスがともされています。それは夜にならなければわからないくらいの細い炎ですが。
そんなロンドンを時間をかけてゆっくり楽しむ時こそ、私にとっては「ロンドンはやっぱりいいなー」と思う瞬間です。
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今回も、日本からいらっしゃったライターさん、カメラマンさんと一緒の取材だったのですが、皆で後藤健二さんのことを思っていました。ご本人はもちろんのこと、ご家族の方々がどういう思いで毎日を過ごされているかを思うと胸が痛くなります。世の中には「何故?」と思うことが多くあり過ぎす。絶対に出ない答えとはわかっていてもいつもいつも同じ疑問を持ってしまいます。
本当にどうか一日も早く釈放され、無事で日本に帰られることを祈っています。