12/10/2015

コピー? それともフェイク?

イギリスではアートに関するテレビドキュメンタリー番組がけっこう多いように思います。中でも、‘ Fake or Fortune ’は名画と思われる絵を所有している人がその真偽の追及を依頼するというもので、BBCは可能な限りの技術やエキスパートの意見を通して最終的にそれなりの機関が本物か偽物かを発表するというもの。先日はドガの絵が「正真正銘のドガによる作品」と認められ、そんなに大金持ちでもない持ち主は大喜び。私も関係ない人とは言え、思わず歓喜の声をあげてしまいました。

もしこの絵が偽(fake フェイク)であった場合はその価値はゼロに近いものです。反対にもしそれが本物となればひと財産(fortune)になるわけです。

昨日は、‘モナリザ’に関する番組でした。世界で一番有名で、一番高価な絵と言われるレオナルド.ダ.ヴィンチのこの作品に関しては今までにさまざまな憶測がされてきました。中でもモデルは誰?と言った内容が多く、中には「ダヴィンチ自身である」という説まで出たくらいです。

この番組の中ではシンガポールにあるモナリザ、ロシアにあるものなどが出ていました。いつかはそれがダ.ヴィンチの手によるものかどうかが解明されると思います。今回の番組でも、描かれている人物のことが取り上げられていました。

一般説としては、この絵に描かれているモデルは裕福な商人フランチェスコ.デル.ジョコンドの妻で、フィレンツェで生まれたリザ.ゲラルディー二であるとされています。デル.ジョコンドがダ.ヴィンチに依頼して描かせたものが‘モナリザ’というわけです。

ところが、モナリザを10年も研究している人が技術分析でキャンバスを調べた結果、現在のモナリザの下に他の女性の絵が描かれていることを発見しました。これにより、モデルの女性が本当にデル.ジョコントの妻だったかどうかの可能性にも疑惑がかけられています。

さて、先日の新聞にコンスタブルの絵のコピーが推定800万ポンド(16億円)でオークションにかけられるというのが載っていました。






コンスタブルはターナーと同時代の画家ですが、ターナーと違う点は自然を自然のまま描いたことだと思います。そこには人間が勝手に想像したドラマはありません。自然が語る色、構成、そういうものが200年もの間、人々の心を捉えています。私が一年ごとにご案内させていただいているワールドブリッジ社の東イングランドのコンスタブルカントリーも徐々に人気を集め、来年は今年に引き続き2年連続で企画されることになりました。そこは200年以上前にコンスタブルが描いた自然がそのまま残っている場所。ですから今ではコンスタブルカントリーとして、特に、野生動植物、ウォーキングの好きな人に好まれています。


さて、この新聞で表されている‘コピー’という言葉です。これは‘フェイク’とは違います。フェイクは正に、故意に本物として描かれた絵のことです。コピーは同じ画家によって描かれたもの、または他の人があくまでコピーとして描いている絵のこと。この新聞の記事によると、「オリジナルとされている絵よりも優れている」と評価している専門家もいるようです。




オリジナルの価値はこのコピーの推定価格の3倍です。同じ作品でも最初に描かれたものがより価値が高いということは、「何でも最初が好き」というコレクターの心理かも? どちらにしても私には遠い存在の金額で自分で所有することはあり得ないのですが、コンスタブルカントリーに行けば画家の存在と素晴らしい自然を思いっきり感じることができますから、それでよしとしましょう。