4/21/2016

ウェールズ魂

ウェールズの首都カーディフに行って来ました。ウェールズはグレイトブリテン島の西に位置し、広さは北海道の約1/4、人口は300万人と北海道の半分強です。1282年にイングランドのエドワード1世に敗れ、1284年からは正式にイングランドに併合されましたがスコットランド同様ウェールズ人は強い愛国精神をもっていて、どこに行ってもウェールズの旗があちこちに見られます。「今日は特別な日?」と思いきや、そうではなく毎日挙がっているのだそうです。





車で行っても列車で行ってもウェールズに入った途端に気が付くことは道路、駅の表示などが全て英語とウェールズ語で書かれていること。ウェールズ語は英語の訛ったものというのは全くの間違いで、完全に違う言葉です。(ウェールズの人の英語は、ウェールズ訛が加わって私は大好きです。)


さてカーディフはそのウェールズの首都で人口は35万人、周辺を含めるとウェールズの全人口の1/3が集まっています。かつては世界最高の石炭輸出国であったウェールズは石油の需要に押されて多くの炭鉱が閉鎖され、近年はサービス産業が伸びています。

今回は列車でロンドンのパディントン駅からカーディフ.セントラル駅まで、約2時間の旅でした。


プラットフォームの駅名は上がウェールズ語、下が英語です。





カーディフセントラル駅
 





通りの名前も英語とウェールズ語。




さて、このウェールズ語ですが、1284年にイングランドに併合されてからしばらくは英語(イングリッシュ)を使うことが禁止されましたが20世紀に入ってウェールズ語を保存するための活動が盛んになりました。学校ではウェールズ語が必修科目になり、ラジオやテレビでもウェールズ語のチャンネルができました。ウェールズのみならず、イングランドにも、そして19世紀にウェールズからアルゼンチンに移民したひとたちのおかげでアルゼンチンにもウェールズ語を理解する人がいます。2004年から2014年の統計によればウェールズの人口の23%がウェールズ語を理解し、そのうちの16%が流暢に話すことができるとなっています。21世紀に入って一時減少したこともありましたが、現在ではその数は、再び上昇中とか。

将来もウェールズでしか通用しない言葉を何故学校で教えるの?と思うでしょう。ラテン語もそうです。日常話す人はいなくなっても、イギリスの学校によっては(特に私立校)いまだにラテン語の授業があるところもあります。

でもよく考えてみれば言葉とは、単にコミュニケーションの道具だけのものではありません。ラテン語は、昔のヨーロッパの公的文献はほとんどラテン語で書かれていましたので歴史を深く理解するうえでは大切です。ウェールズ語も同じでウェールズの歴史、アイデンティティを理解する大切な道具だと思います。ラテン語よりも「自分の国」ですからウェールズ人にとってはもっと大切でしょう。

世界に通用する言葉はひとつあれば(それが英語であっても、またはこれから作られる言葉であっても)良いわけで、あとは自分の国の言葉をしっかり学ぶことですよね。これってなんだか私が頑なに日本語を忘れたくない!と思う気持ちと重なるところがあるかもしれません。自分の使う日本語がおかしくなると気持が沈んでしまいます。
 


ウェールズの旗
 
 
Flag of Wales
 
 
 
ご存知のようにユニオンジャックはイングランド、スコットランド、北アイルランドの国旗を(そう、実はこれらは国なんですね。それらがイギリス - 連合王国 - を形成しています)重ねて作ったものです。何故そこにウェールズが入っていないかと言えば先ほどお話ししましたようにウェールズは1284年にイングランドと同じ国になってしまいましたので、イングランドの旗が代表して使われているわけです。

1301年にはエドワード1世の後継ぎがウェールズで生まれ、‘ウェールズの王子Prince of Wales’のタイトルを授かりました。(これが現在でもイギリスの皇太子がPrince of Waleと呼ばれる所以です) 近年になって、ウェールズもユニオンジャックに含もうという声も上がっていますが、その話題も知らないうちに消えていることが多いのです。もし、ウェールズを入れるとすればどんな国旗になるのでしょうね?せっかくの赤、青、白といい感じなのに、その中にグリーンが入る?個人的に思うのは一番しっくりいくのは真ん中に(線の一番多く重なる部分)赤いドラゴンを入れることかしら?でも今のユニオンジャックがあまりに有名なので変わる可能性も少ない気がします。ウェールズの人には残念ですが。
 
 
とにかく、国旗に関しては本当に複雑なので、近いうちにユニオンジャックについてもうちょっと詳しくお話しすることにします。国旗ってすごく大切なものですから。カーディフで沢山の国旗を見て羨ましくなりました。日の丸は世界に誇れる素晴らしい旗で、外国人もあの国旗は「日本の国旗だ」とすぐにわかるのに、実際に日本で目にすることは少ないですものね。
 
 
ウェールズの話に戻りますが、彼らはいつも「私はウェールズ人」という誇りを持っています。スコットランドも同じで、「貴方、イングリッシュ?」なんて言おうものなら「私はスコットランド人です!」ときっぱり否定されます。それも怖い顔をして。ハイストリートに旗が立っているのと同じようにお店でもドラゴンの品物をあちこちで見かけます。それはお土産屋に限らず、キッチンショップでもドラゴンコーナーがありましたし、宝石店のウウィンドーにもドラゴンのペンダントやダチョウの羽根3枚の(Prince of Walesの象徴)カフリンクスなどが見られます。
 
 

 
 
カーディフの町は歩いて観光するのが一番です。残念ながらその日は月曜日で美術館や博物館はお休みでした。そこでハイストリートの先にあるカーディフ城を見学。最後に訪れたのはもう10年くらい前の事ですから。ここは外観は3世紀のローマ時代(壁)、12世紀のノルマン時代(本丸-写真)、そして他は中世にかけて建てられましたが、内部は完全に19世紀に城主であった3代目ビュート侯爵によって完璧ヴィクトリアンゴシックに改装されているという珍しいお城です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 



ウェールズと言えばラグビーと音楽です。ラグビースタジアムのプリンシパリティ.スタジアムも町の中心にあります。
 
 



この日、仕事は夕方からだったので早めに家を出てカーディフの町を散策しました。パラパラっと少し雨も降りましたが、それでも3時間くらいの間にウェールズ魂をしっかり感じることができました。