ところが今回は初めて「生で見たかった」と思いました。日本でも、最優秀映画が一旦は「ラ.ラ.ランド」と発表され、プロデューサーなどがスピーチを始めてから、実は「ラ.ラ.ランド」ではなく、「ムーンライト」が受賞したことが判明したということが大きなニュースになっていることと思います。
テレビや、新聞ではアカデミー賞が88年前に始まってから「最大の間違い」と報じています。そのなり行きを簡単に言いますと、アカデミー賞は沢山のカテゴリーがありますが中でも一番注目されるのは何と言っても最優秀映画賞です。世界中の映画の中からその年の最高傑作が選ばれるのですから。さて、発表をするために舞台に登場したのが大ベテラン俳優のウォレン.ビーティとフェイ.ダナウェイ。賞の結果は彼らが持っている赤い封筒の中に入っています。この時点で世界で結果を知る人は二人のみ。開票を監督する男女ふたりのみです。(後でわかったことですが、このふたりが最後に舞台で結果を発表する人に封筒を渡すそうです。)
さて封筒を開いたビーティは何か戸惑った感じ。誰しもが「早く結果を知らせて!」という顔をしています。封筒に他のカードが入っていないかをチェックしたり何か様子が変です。結局ビーティはダナウェイに結果が書かれたカードを渡し、彼女が「今年のアカデミー賞受賞映画は‘ラ.ラ.ランド’です。」と発表しました。興奮しながら「ラ.ラ.ランド」の製作者たちがぞろぞろ舞台に上がり、スピーチを始めます。
ところがしばらくしてスピーチが中断されました。そこに「ラ.ラ.ランド」のプロデューサーがマイクを取り、「これは冗談ではありません。本気です。最優秀映画賞を獲得したのは‘ムーンライト’です!」と発表したのです。
すぐにウォレン.ビーティが「カードに´ラ.ラ.ランド’と書かれていたが、エマ.ストーンの名前があっておかしい?と思った。それで発表をためらっていただけ。決してみんなを笑わせようとしたのではない。」とマイクを取って言いました。この授賞式にはジョークはつきものです。最後までジョークと信じた人もいたと思います。「ラ.ラ.ランド」で役を演じたエマ.ストーンは、その前に最優秀女優賞を獲得していました。これがそもそも最優秀映画賞発表の間違いにつながることになるのですが。
さて、ここで私が感激、驚き、感心したのはそれぞれの立場の違う人間がそれぞれの人間性を短時間の間で披露することになったことです。
まずはウォレン.ビーティの行動。彼の役目は単にカードに書かれている映画名を発表するだけのこと。それが「おかしい?」と判断した時点で、あわてもせず視聴者にジョークと思わせるくらい冷静にショーを進め、ついには何も知らないダナウェイに振ったというわけ。ここまでくれば時間の関係でダナウェイは映画の題名だけを見て発表することになりました。
ところがアカデミー賞の開票から発表の経過に至っては政治の選挙と同じくに厳しい秘密を維持しています。それでも万が一、発表が間違っている時は上記の2人が(世界で発表前に結果を知るただふたり)、間違いを正すことになっています。それが今回実際に起こったのです。彼らは直ちに関係者に通告。こうして「ラ.ラ.ランド」のプロデューサーが、すぐに上記のスピーチで「ムーンライト」が賞を取ったことを告げます。
このプロデューサーが咄嗟にとった行動は素晴らしいものでした。せっかく手にしたトロフィーを「ムーンライト」のプロデューサーに渡し、祝福します。この場合、彼は「発表後のことだから、今はこのまま賞をもらっておき、後で主催者の決断に従えばいい」とそのままにしておくこともできたはず。間違いを知ってから、彼の発表まで数秒間です。彼には間違いを知っていながらトロフィーを手にするような意識は始めからこれっぽっちもなかったと言えるでしょう。あっぱれです。映画製作者にしてみれば、欲しくて欲しくてたまらない賞です。彼らのゴールですから。
人間って、よくよく考えてとる行動も大切ですが、咄嗟の時にその人の本当の人間性が出るのではないでしょうか?ボーイスカウトのモットーと同じです。「Be Prepared.備えよ常に。」
何があってもうろたえず、咄嗟の時でも正しい判断が出来る人間になるよう常に自分を訓練すること。と、いつも自分に言い聞かせています。でもそれを実際に行動に出来る人を見ると感動します。
何があってもうろたえず、咄嗟の時でも正しい判断が出来る人間になるよう常に自分を訓練すること。と、いつも自分に言い聞かせています。でもそれを実際に行動に出来る人を見ると感動します。
因みに、今回のこの最大の間違いは、単に封筒をウォレン.ビーティに渡した人(前述した監督者ふたりのうちのひとり)が間違った束から渡してしまったことが今日のニュースでわかりました。