2/06/2015

イギリス王室


下の写真はHousehold Cavalryといって女王のボディガードである騎兵連隊です。イギリスの高等陸軍部隊の一部で、2つの連隊から構成されています。この写真の濃いブルーのマントを着た連隊はBlues & Royalsと呼ばれ、もう一つの赤いマントを着た連隊はQueen's Life Guardsと呼ばれています。






前回はイギリスの王室の事にちょっと触れましたが、私はガイドをする際に時々イギリス王室の話をします。ツアーなどで長距離を移動する時などはたっぷり時間がありますから、そういう時間を利用します。イギリスの王室の歴史はドラマになるくらいおもしろく、実際映画やテレビドラマ、そしていつの時代でも特定の君主に関する本が出版されています。

日本の皇室と違うところは沢山あります。一番感じることは日本の皇室よりももっと身近に感じる存在であること。

イギリスは「言論の自由」を何よりも大切にする国です。ですからマスコミも勝手なことを書いています。信じるか信じないかは、個人個人が決めることです。‘ザ.サン’などのタブロイド誌に書かれているようなことは、私は真剣に受け止めることはしません。はっきり真実ではないとわかることも平気で書いていることもあります。

一番長い間、ゴシップの対象になるのがロイヤルファミリーですよね。映画スターや、ポップスターなどは数年経てばフィーバーが薄れて、小さなプライベートのことなんか誰も興味を示しません。ロイヤルファミリーは一生ですから。本当に気の毒です。何を言われてもじっと耐えているのですものね。ロイヤルファミリーだって人間ですから間違いはするはずです。そんなことをいちいち国中に発表されてしまうなんて。私は絶対にロイヤルファミリーにはなれないなー。

話はちょっと逸れてしまいますが私がイギリスに初めて来た時に通っていた英会話クラスの授業でのこと。いきなりアラブの国から来ていたクラスメートに「ヒロヒトは元気か?彼のことを詳しく知りたい。」と言われたことがあります。ヒロヒト?そんな友達いたかしら?それよりも、質問した彼と共通の知人なんているはずがない!と思い、咄嗟に出た言葉が ‘Who is Hirohito?’

これを聞いたクラスメートは、私の言葉に「信じられない!」と言った様子。目を真ん丸く開いてしばらく黙っていました。続いて出たのが、「ヒロヒトを知らないのか?本当にあなたは日本人なのか?」という言葉。私がどこかの国のスパイと思ったのかも?昭和天皇の名前が‘ヒロヒト’だったなんて、お恥ずかしながら当時は知りませんでした。その時は先生が助けてくれて一件落着。それでも天皇陛下を呼び捨てにすることは出来ませんでした。「‘ヒロヒト’なんて、馴れ馴れしく呼ばないでください。‘テンノウヘイカ’と呼んでください。」と言ったように記憶しています。

ダイアナ元皇太子妃が亡くなってから、イギリスの王室もずいぶん変わったように思います。ある程度の王室に関わる制度の改革が見直される時代になったということです。なんと言っても大きな変化は「お世継ぎは男でも女でも最初に生まれた子が第一王位継承権を持つ」という法律になったことでしょう。これも女王の提案と聞いています。

伝統を重んじる国でありながら時代に合わなかったり、支障のある制度はどんどん変えていくという合理性ももった国がイギリスです。

このように王室と国民の間の厚い壁がどんどん薄くなってきていることを感じます。ダイアナ妃が残してくれた最も大きなレガシーなのかもしれません。これから将来王室が存在するには、王族がいつも雲の上にいて国民との接点がなくなることを避けなければいけないということなのでしょう。‘男女平等が当たり前になっている現在の社会で「男だから」「女だから」という制度そのものが時代に遅れている’というのが国民のみならず女王の考えでもあったわけです。

「王室がこれから長く存在するにはどうすれば良いか」が、今のロイヤルファミリーにとって一番大きな課題だと思います。それは王室が、ヴィクトリア女王がアルバート公を亡くして国民の前から長い間姿を消した時に学んだことです。「君主は必要ない」と思う国民が増えた時です。あのままで行ったら、もしかしたら今イギリスは共和国になっていたかもしれません。(詳しくは映画‘Mrs. Brown'をご覧ください。)「いつも女王は国民と共にある」と私たちに感じさせてくれることが大切ということです。

先日おもしろい新聞記事を読みました。チャールズが女王から王位を引き継ぐことに関しての記事です。それは「チャールズが王になる準備ができているか?」ではなく、「国民がチャールズを王として受け入れる準備があるかどうか?」ということ。そうだなーと思いました。60年以上在位されているエリザベス女王の後を継ぐチャールズは、本当に大きな責任を背負っています。すぐにエリザベス女王と同じくらいの人気を獲得することは不可能でしょう。でも私はカミラと一緒にこの国を引っ張っていくチャールズに期待します。カミラは日本では人気がないと聞いています。日本のマスコミの報道の仕方にも問題があるかもしれません。

イギリスを影の力として支える王室が存在するには立派な君主が必要です。チャールズが立派な王になるにはカミラの力が必要です。これからのロイヤルファミリーにはカミラの存在が必要なのです。愛した女性のために王位を捨てたエドワード8世(現女王の叔父)が退位する際にラジオで国民に声明した言葉を思い出します。

「私は私の愛した女性の協力なしには立派な王になれないという結論に達しました。」

王、女王ほど内助の功が大切な夫婦っていないなーとつくづく思います。国民にとってカミラがどれだけ人気があるかどうかより、チャールズにとってカミラの力がどれだけ大切かを考えるとき、最愛の女性と結婚したチャールズの王としての将来も明るく見えます。

王室の事情、歴史を知れば知るほど、イギリスという国がよりはっきりと見えてくるでしょう。