8/12/2015

ブラックベリー泥棒?

ウィリアム.モリスのデザインに「いちご泥棒」というのがあります。モリスの住んだケルムスコット.マナーで、鳥がイチゴをつついているの見て考たデザインだそうです。モリスはイチゴを盗まれたからといって鳥を責めることなくじっと眺めていたのでしょうね、きっと。

一週間ほど前、主人が毎日犬の散歩で行く公園でブラックベリーをどっさり摘んで帰ってきました。ブラックベリーは、イギリスではよく道端の生垣に見られるもので、多くの公園にも沢山あります。この時期にウォーキングをすればブラックベリーをつまみながら歩くことも多く、帰る頃には舌が黒くなってしまうことも。






さあ、こんなにたくさんのブラックベリーをどうしたかと言いますと....


プロセッコに入れて。徐々にプロセッコがピンク色に変わってきます。

 
 
 
 
ジャムは時間がかかるので一応冷凍して後で作りましょう。残りはヴィーガンのケーキに入れました。ピーカンナッツを入れたクランブルを上にかぶせたケーキです。珍しいことに最初から大成功。ナッツとブラックベリーの組み合わせが絶妙です。



 

 
こうしているうちに昨日、また主人が腕にひっかき傷をたくさん作って(ブラックベリーにはとげがいっぱい)帰ってきました。

 
今度は「嬉しいっ!」という気持ちよりも、「こんなに摘んで大丈夫かな?」という気持ちの方が強くなり、「もしかしたら法に触れることをしているのでは?」なんて思ってしまいました。
 
 
今から20年近く前の事ですが、ウェールズのウェディングに出かけるお客様に同行するという仕事がありました。新郎新婦とその友人15名くらいのツアーです。正確にはおふたりはすでに入籍されていたので、ウェディングの代わりにBlessingという式が行われたということになります。すでに結婚したカップルに「神のお恵みがあるように」と牧師さんが祝福してくださいました(Blessing)。
 
式場に向かう途中の道端にヤナギランが綺麗に咲いていました。どこにでもあるお花です。友人のおひとりが「そうだっ!ブーケを作ろう!」と提案してくださって、バスを停めて皆でヤナギランを摘みました。
 
その後で、「イギリスでは野生の花を摘んではいけない。」と聞きました。それ以来、ずっと後ろめたい気持ちを持っていたのです。
 
ヤナギランを摘んではいけないということはブラックベリーも摘んではいけないのでは?
 
そう思ったら主人が泥棒に思えてきて、ついでに私も罪の意識を大きく感じるようになりました。プロセッコ、ケーキどころではありません。それで、色々調べてみました。だって、公園で栗拾いやブラックベリーを摘んでいる人は沢山います。その人たちは皆泥棒?
 
いくら調べてもはっきり「ブラックベリーを摘んではいけない。」という法律が見つかりません。最終的には以下のことがわかりました。
 
*公の土地では個人が使う分の野生の花や果物、きのこ類は取ってもかまわない。
 ただし、公園など都道府県や公的機関が管理している場所に植えられているもの(栽培されたもの)は取ってはいけない。(植えられたものか野生の物かは自分で判断しなければいけません。)

*いずれの場合も土から根こそぎ取ってはいけない。
 
*野生でもadder's tongue や、lady's slipper orchidのように絶滅の危機があり、保護しなければいけないものは取ってはいけない。
 
*公的な土地で野生の花を摘む場合は商業用に使ってはいけない。(ジャムを売ったりするために摘むのは違反ということ)
 
*個人の土地では取ってはいけない。ただし、土地所有者はブラックベリー一個くらい取られただけで告訴できない。
 
こういうのも見つかりました。「個人用でも他の人、野生の動物が楽しめなくなるほど沢山取ってはいけない。」
 
結局ほとんどの情報の最後の答えはこの国のいつものクセで、「常識をもって個人が判断する。」ということみたいです。これが日本人の私には困ったことで、「常識はそろぞれ違う」と思ってしまうのです。ボールに2個分も摘んできた主人は、他の人や野鳥が食べられるほど十分公園に残してきたかしら?それともやっぱり主人はブラックベリー泥棒でしょうか?