歩くと、他の犬に吠える癖があります。でも、「たくさんの犬がいるところに連れて行ったら、一匹一匹に吠えている時間がないので諦めるでしょう。」と言うのが私の魂胆でした。ドッグショーも行われていました。
イギリスでは世界的に有名な犬の品評会であるクラフツ(Crufts)が毎年開催されます。私はずっと前に、日本からいらっしゃる犬好きのお客様と一緒に仕事として毎年行っていました。そのうちにだんだん英国ケンネル協会が決める審査の基準に疑問を持ち始めました。それは決して犬の健康のために定めた基準ではなく、全くその反対で犬にとっては虐待に値する基準も多くあったのです。毎年クラフツに行く度に心が重くなり、10年以上続けた仕事から降りることを決心しました。お客様とは長いお付き合いで、親しくさせて頂いたのでこの仕事を辞めることは淋しくもありましたが、どうしても納得がいかなかったのです。
その後、BBCの調査の結果が出て、英国ケンネル協会に審査基準を改正することを求めましたが彼らはこれを無視。ついにBBCは50年続いたクラフツの生中継を断ち切りました。また44年続き、毎年クラフツへ150万ポンドの収益をもたらしたとされるペディグリーチャム(ドッグフード)は、このBBCの番組の後スポンサーを降りました。もう10年以上前のことです。ですから今はクラフツの名もあまり聞かなくなりました。
でも、最近私が行くドッグショーは全く違ったショーです。例えば今回のウィンズロウ.ショーのドッグショーのカテゴリーは19ありました。例えば‘子犬の部門’‘7歳以上のベテランの部門’‘ジュニアハンドラーの部門’の他、‘ハンサムな犬部門’‘可愛い女の子部門’‘レスキューされた犬部門’‘一番尻尾を振る犬部門’‘一番オーナーを愛している部門’‘一番素晴らしい雑種部門’ 等々。
ジュニア.ハンドラー
私たちはルビーとジャスパーを出すつもりはなかったのですが、受付のブースを通った時に、主人と顔を見合わせました。両方とも「出してみる?」とすっかりその気になっていたのです。ジャスパーは思った通り、あまりに沢山いる犬に「いちいち吠えていられない」と悟ったようで、大人しくなっていましたし、私は、いつかルビーの美しい歩きをみんなの前で見せたいという思いがずっとありましたから。それでレスキューされた犬の部門に出すことに。
レスキュードッグの部門。
結局3本足の犬が優勝しましたが、たしかに彼(彼女?)は美しかった。納得....というわけでルビーもジャスパーも賞はいただけませんでしたが、良い経験だったことでしょう。
(ショーに出たことさえ知らないのに、親バカぶりはいつも同じ。)
動物は自然に育ててこそ美しいのではないでしょうか。審査の基準で頭を小さくするためにブリーディングを繰り返し、脳みそが圧迫されて死んでいくような、そんな基準って正に虐待と思います。動物愛護、保護が益々大きく取り上げられるようになって、伝統的なドッグショーも審査基準を変えないと将来は動物を虐待しないドッグショー以外は姿を消すことは目に見えています。
昔、愛犬のロビーをドッグショーに出して優勝したことがあります。カテゴリーは「審査員が一番家に連れて帰りたい犬」でした。それはクラフツでチャンピオンになるより、もっともっと価値のあるものでした。