1/23/2014

シルバー.ダラー

我が家の近くの商店街で私たちが30年前にここに引っ越してきた当時からあるお店は現在では3軒のみになってしまいました。長い間お世話になっている駅の 近くのヘアードレッサー、お客さが入るところをほとんど見かけないインド料理のレストラン、そしてピザ屋さんです。以前は大通りにはおもちゃ屋さん、花屋 さん、八百屋さん、紳士服専門店など英国スタイルのお店が多かったのですが、次第にインド系のひとたちの人口が多くなり、インド料理のレストラン、食料品 専門店のほか、ファーストフードのお店が5軒に一軒くらいあります。その中で保存に指定されているアートデコ.スタイルの駅(写真)や元映画館の建物が 堂々とたくましく建っています。さまざまな国の人が住み、いろんな文化に接することは晴らしいことと思います。でもこうやってどこもかしこも英国以外の国 のお店が並んでくるとちょっぴり淋しさを感じます。

さて、私たちより古くからここの住民であるそのピザ屋さんですが、名前はシルバー.ダラー。アメリカの女性軍曹によって1959年にここにオープンされま した。当時は英国ではピザなるものが何であるかも一般の人にはわからなかった時代です。誰が来るかわからないと、そのオーナーはピザのカウンターの下に散 弾銃を置いていたとか。また気に入らない人へは断固としてサービスを断るなど、とにかく変人だったようです。

でもそういう彼女のところにやってきた人の中にはびっくりするような有名人もいました。フランク.シナトラ、サミー.ディヴィス.ジュニア、The WhoやThe Searchersのような60年代の有名バンドのメンバーたちです。1970年に現在のオーナーの手に渡ってからもジャック.ニコルソンなどが訪れまし た。ミック.ジャガーは「僕が追い出された唯一のレストラン」と言ったとか。何が理由にせよ、有名人は顔パスが多い最近、このシルバー.ダラーは独自とい うか、独裁というか特別なポリシーで営業していることは確かです。だから宣伝もしていません。ピザを作る人はオーナーの義理の息子。常連客には顔を見ただ けで好みの焼き具合のピザを作るというプロです。

ロンドン郊外の普通の住宅街にこんなピザ屋があったなんて、どこの本にも書かれていません。内装も普通だし、ピザ以外はどこにでもあるような料理のメ ニューです。でも何か心地良さが感じられるレストランです。これからもずっとこのまま変わらずにピザ屋さんを続けてほしいものです。決してインドレストラ ンにはならないで!