南ウェールズのテンビーという素敵な町から小さなボートで4キロほど行ったところにカルディ島(Caldey Island)があります。島には18名の修道士を含む約60名の人が住んでいます。10年くらい前に行った時は、「日曜はボートは出ません」と言われ、翌日に行ったことを覚えています。つまり日曜は修道院のみならず、島全体が安息日ということ。そしてボートは4月から10月までしか運航されていませんので、冬場は完全に離れ小島になります。
この島には6世紀のケルトの時代にキリスト教の修道院がありました。その後12世紀にはべネディクト派の修道院になり、1906年に、アングリカン教会が島全体を購入しました(現在の建物はこの時に建てられたもの)。しかし、財政困難に陥り、1929年に再びカソリックのシスターシアン派の修道院に渡り今に至っています。
そこでは今日修道士たちが農業を営み、お菓子やチーズ、香水などを作って暮らしています。修道院はアーツ&クラフツの最たるデザインで、真っ白い建物は実に印象的です。島には修道院の他ケルトの十字架、13世紀の教会、ノルマン時代のチャペルなど興味深いものが多くあります。そして野生動物が沢山住んでいて自然派のイギリス人たちにも人気です。
本当はもっともっと観光宣伝をしてもいいのでは?と思うくらい美しい島ですがイギリス人でさえこの島を知る人は多くはありません。そんなカルディー島でなんと初めての犯罪が起きたと報道されました。
犯罪と聞けばすぐに殺人を思い出す私はアガサ.クリスティの心境。正にバー島の「そして誰もいなくなった」です。 修道士が殺された?犯人は同じ修道士?それともボートでやって来た観光客?それとも皆殺されて誰もいなくなった?
で、真相はどうかと言いますと子供と一緒にやってきた観光客が逮捕されたというのです。理由は、修道士たちが経営するチョコレート工場を見学していた時のこと。7歳の子供が言うことをきかないのでお父さんがお尻(かどうかはわかりませんが、とにかく体のどこかを)を叩いたというのです。そこにいた一般の人がこれを見て警察に通報、救命ボートでやってきた警察に45歳の父が逮捕されメインランドに連れて行かれました。そして2か月後の裁判でこの父は息子に手をあげたことを認めたという内容です。
新聞は「今世紀最大の犯罪」と皮肉った記事を載せ、島に40年以上住む人は「島での初めての犯罪だ。時代が変わっている証拠。」と話しています。神聖な島での大きな大きな出来事だったようです。