12/11/2017

チューダーの館のクリスマス

今年最後の仕事となった二つのツアーから戻りました。店仕舞いにはちょっと早い気もしますが、引っ越してからはロンドンでの仕事が少なくなったのがその理由です。

さて、今回のツアーでは時期が時期なだけにクリスマス雰囲気が溢れる場所を沢山周りました。

コッツウォルズのボートン.オン.ザ.ウォーターの 「浮かぶクリスマスツリー」




ブロードウェイは夜になると人通りも少なく、クリスマスライトを鑑賞しながら静かに散歩です。



ホテルでも。




クリスマスライトが村や町で灯る美しい季節ですが、歴史ある館のクリスマスディスプレイは格別です。チャールズ.ディケンズの小説「クリスマス・キャロル」があまりにも有名で、その上クリスマスツリーやクリスマスカードの習慣が始まったのでほとんどの人は歴史的クリスマスと言えば「ヴィクトリアン・クリスマス」を思い浮かべますが、今回訪れた2件の館はどちらもチューダー朝(16世紀)の建物です。そう、お后を6回変えローマ法王、神聖ローマ皇帝に1番目の王妃との離婚が認められず、カソリックから独立、イングランド国教会を設立した暴君ヘンリー8世やその娘エリザベス1世の時代です。

ケント州のヒーヴァー城は、姦通罪の罪をきせられ処刑されたヘンリー8世の2番目のお妃でありエリザベス1世の母であったアン・ブーリンが育ったお城です。1903年にアメリカの大富豪であったウィリアム・ウォルドーフ・アスター(後に男爵位を授かりヒーヴァー子爵アスター公となる)が買い取りましたが、家族が住みお客をもてなすには本館が狭すぎるため(!!!)すぐ後ろに「チューダーヴィレッジ」というチューダー調の建物を新築。ここは現在は宿泊施設となっています。







チューダーヴィレッジ



丘陵地方にあるハドンホールは12世紀からの建物ですが、17世紀に増築されたほんの一部分を除いては多くがチューダー時代に増築、改築された16世紀の「新しい部分」です。ジェイン.オースチンはここを訪れている間に「高慢と偏見」の一部を書き、またミントンの陶器の柄で有名な「ハドンホール」はここにあるタペストリーの柄にヒントを得たという説があります。でも私はここを訪れると必ず思い出すのはシャーロット・ブロンテの「ジェイン・エア」です。特に駐車場からお城に向かう道から見上げる館はロチェスター氏の館で火事で燃えているあのソーンフィールドの館です。私にはイメージ的にぴったりに思えます。










クリスマスのこの時期、日本からイギリスへの訪問客は少ないのが残念です。確かに夏と違って日照時間は短くなりますが、その代わりイギリス的なクリスマスの雰囲気が味わえて素敵ですし、暖炉の薪がパチパチ音を立てて燃える暖かい部屋でお茶を飲んだりマルドワイン(スパイスのきいたクリスマス時の熱く甘いワイン)を片手の会話を楽しんだり。皆さんそれぞれに合った楽しみ方が沢山あります。

ハドンホールの館を出ると「この時期のイギリスっていいですねー」というお客様の言葉に応えるかのようにまるで空に絵の具を流したような淡いピンクとブルーの空がこの日一日の日程の幕を閉じてくれました。





クリスマス直前は航空運賃、ホテルの料金も上がりますが、12月初めですと通常気温もそんなに下がることもなく(今年は10日から大雪が降りましたが)お勧めの時期です。