7/31/2014

べニシアさんの生家ケドルストン.ホール

8月にご案内する予定になっているお客様からメールで「ケドルストン.ホールは知っていますか?」とお問い合わせをいただきました。なんという偶然でしょう! 先日の湖水地方からの仕事の際、そこまで行く途中に立ち寄ったのがこのケドルストン.ホールだったのです。そのことをお伝えすると、早速お客様からメールをいただきました。「ハーブ研究科で有名なベニシアさんの生まれた家だそうです。」

 
ベニシアさんのことはこれまでにも多くの方からお聞きしていて、いつかはお会いしたいと思っていた方でした。


 
 
 
 
 

1765年、ナサニエル.カーゾン(後の一代目スカーズデイル卿)のために建てられたケドルストン.ホールは現在はナショナルトラストの手に委ねられていますが、東のパビリオンには現在でもカーゾン家の人が住んでいます。建築家はイタリアでの建築の勉強から帰ったばかりのロバート.アダムでした(‘アダム兄弟スタイル’を作り上げ、建築とインテリアを総合的に仕上げた。陶芸家であったジョサイア.ウェッジウッドに多大の影響を与えた有名な新古典派の建築家のひとり。ウェッジウッドのジャスパーウェアの飾り用陶器は18世紀の貴族の館に多く見られる)。近くのチャッツワースハウスに負けないほどの館を創るために、アダムは天井の模様からドアのハンドルまで細心の注意を払ったと言われます。

 

館の中心の部分は単にスカーズデイル卿の膨大な芸術作品のコレクションの展示と、お客様を持て成すためのもので一家は東のパビリオンに住み、西のパビリオンは台所、洗濯場、召使いの仕事部屋に使われていました。


 

 
支柱のない階段は当時最も新しい‘飛んでいる階段’スタイルを使っていて高度な建築技術がうかがえます。




 
ローマ時代のヴィラにある宴会場風に造り上げた‘大理石の間’にある暖炉はそれだけで芸術品の価値が十分あるものです。


 

 始め、大規模な‘音楽のギャラリー’を計画していましたが、金銭的に無理と言うことがわかって「これで我慢しよう」(と思ったかどうかはわかりませんが)とこの‘音楽の間’が造られたそうです。


 

 ダイニングルームのテーブルの上にある銀器はイパーンと呼ばれるもので、18世紀の大邸宅のダイニングルームのテーブルの中心に置かれたものです。ただの飾りとしてだけではなく、花や果物を置いたり、塩胡椒などの調味料入れを吊るしたりしたものです。このイパーンはスカーズデール卿所有の馬が競馬で優勝した時の賞金で買ったもの。

 


 
見学ていると美しい音楽が流れてきました。サロンでバイオリンを弾いていたのは若い男性。王立音楽学校の学生ということですが、ボランティアガイドをしている祖父と一緒に冬にケドルストン.ホールを訪れた際、是非ここでバイオリンを弾いてみたいと思ったそうです。その夢が叶ってその日のミニコンサートとなりました。祖父の電気オルガンに合わせて弾く若者のバイオリンの音に訪問客もうっとりでした。





 
そういえば先日訪れたティーショップも父息子が経営しているティーショップでした。息子がシェフ、お父さんがウェイターで、とても楽しそうでしたよ。むっつり型の息子とニコニコ顔で誰にも話しかけるお父さんのサービス。見ていてとても微笑ましかったです。

 

ケドルストンでの半日はこうして終わり、私はその後ヨークシャーデールに向かいました。日本でも英国のテレビドラマ‘ダウントンアビー’が人気のようですが、18世紀から20世紀の半ばまでの貴族の生活は、ケドルストン.ホールのような館を訪れてみると肌で感じられます。英国に滞在されることがあったら是非訪れてみてください。