その野原にはまたブラックベリーやクラブアップル(姫リンゴ)、スロウの灌木、木があるので私にとっても ‛遊び場’になっています。
クラブアップル・ジェリーを作ります。
さて、羊は中世からイギリスの経済を支えてきました。イギリス産の羊毛は質が良く国内でも、そしてヨーロッパ各地にも輸出されていました。羊毛で財を成した人は数えきれず、その富を使って建てられた教会 ‛ウールチャーチ’ はコッツウォルズやサフォークなどに今でも多く見られます。
羊毛は、外国から安い毛が入り出して徐々に産業としても消えていくのですが、その代わりに肉用として羊が飼育されるようになりました。現在でもイギリスの田園風景の一部になっている羊はほとんどが肉用です。
今年もクラブアップルが生る時期、羊がやってきました。羊はオドオドしていて、あまり賢くなく、草を食べることだけに専念している動物とみなされていますが、羊たちを見ていると実はそうではなく、好奇心旺盛でフレンドリーな動物であることがわかります。
クラブアップルを採っていると、沢山の羊が一斉に近寄ってきます。襲われることはなく、数メートルのところから近寄ってきません。みんなの目が私に向いています。まるで「何しているの?」と言わんばかりに。
しばらく羊と私の沈黙の会話が続きます。それだけでなんとなく心が通じている感じになります。こちらが動かなければ、羊たちも一向に動こうとしません。
会話をしているうちに、私も羊の仲間に入れてもらえたような気持ちになります。でも私の気持ちの中で影をおとしているのは、「この子たちもいずれは殺されてしまう。」という悲しさです。
何年か前にお客様とウォーキングをしているうちに母親から離れてしまった子羊がメーメー泣いているのに出会いました。母親も泣いています。母子の間には柵があって、子羊は柵のどこかに開いている小さな穴から出てしまったのでしょう。
さあ、それからお客様と一緒に、柵が切れたところまで子羊を誘導するのに一生懸命です。牧羊犬がいたらすんなり事がおさまったでしょうに。結局しばらくして誘導に成功。母子は再会できたのでした。今年もまた、一匹だけ隣の野原に入ってしまった羊を、今度は私ひとりで仲間のところに戻してあげました。
昨年と今年は違う羊です。昨年の会話をした羊はどうしたのか?と思うと更に胸が痛みます。
昨年の羊。
クラブアップルのジェリーはおいしくできましたが、食べるたびにその年の羊のことを思い出します。