11/25/2016

離れ小島で初めての犯罪


南ウェールズのテンビーという素敵な町から小さなボートで4キロほど行ったところにカルディ島(Caldey Island)があります。島には18名の修道士を含む約60名の人が住んでいます。10年くらい前に行った時は、「日曜はボートは出ません」と言われ、翌日に行ったことを覚えています。つまり日曜は修道院のみならず、島全体が安息日ということ。そしてボートは4月から10月までしか運航されていませんので、冬場は完全に離れ小島になります。

この島には6世紀のケルトの時代にキリスト教の修道院がありました。その後12世紀にはべネディクト派の修道院になり、1906年に、アングリカン教会が島全体を購入しました(現在の建物はこの時に建てられたもの)。しかし、財政困難に陥り、1929年に再びカソリックのシスターシアン派の修道院に渡り今に至っています。

そこでは今日修道士たちが農業を営み、お菓子やチーズ、香水などを作って暮らしています。修道院はアーツ&クラフツの最たるデザインで、真っ白い建物は実に印象的です。島には修道院の他ケルトの十字架、13世紀の教会、ノルマン時代のチャペルなど興味深いものが多くあります。そして野生動物が沢山住んでいて自然派のイギリス人たちにも人気です。

本当はもっともっと観光宣伝をしてもいいのでは?と思うくらい美しい島ですがイギリス人でさえこの島を知る人は多くはありません。そんなカルディー島でなんと初めての犯罪が起きたと報道されました。


 
 
 
犯罪と聞けばすぐに殺人を思い出す私はアガサ.クリスティの心境。正にバー島の「そして誰もいなくなった」です。 修道士が殺された?犯人は同じ修道士?それともボートでやって来た観光客?それとも皆殺されて誰もいなくなった?
 
 
で、真相はどうかと言いますと子供と一緒にやってきた観光客が逮捕されたというのです。理由は、修道士たちが経営するチョコレート工場を見学していた時のこと。7歳の子供が言うことをきかないのでお父さんがお尻(かどうかはわかりませんが、とにかく体のどこかを)を叩いたというのです。そこにいた一般の人がこれを見て警察に通報、救命ボートでやってきた警察に45歳の父が逮捕されメインランドに連れて行かれました。そして2か月後の裁判でこの父は息子に手をあげたことを認めたという内容です。
 
新聞は「今世紀最大の犯罪」と皮肉った記事を載せ、島に40年以上住む人は「島での初めての犯罪だ。時代が変わっている証拠。」と話しています。神聖な島での大きな大きな出来事だったようです。

11/19/2016

メリーポピンズを育てる学校。

「お砂糖ひと匙で」や「2ペンスを鳩に」「スーパーフレジェリスティックエスピアリドーシャス」などは「メリーポピンズ」の映画に出てくる曲です。映画は知らなくても、これらの曲はほとんどの方はご存知でしょう。ジュリーアンドリュースふんするメリーポピンズが黒い傘をさして、空から飛んできてロンドンに住むジェーンとマイケルのナニー(乳母)になるのが映画の内容です。私も子供たちが小さかった時は何回、いいえ何十回この映画のビデオを見たことでしょう。(子供は同じビデオを何度も何度も繰り返し見たがりますね) 怠慢な母にとって「メリーポピンズ」「オズの魔法使い」「ナルニア王国物語」、クリスマスが近づくと「ミッキーのクリスマスキャロル」「スモール.ワン」は家事に忙しいときは、ナニーに代わって随分お世話になりました。

イギリスには空は飛びませんが、メリーポピンズのようなナニーを育成する学校ノーランド.カレッジがあります。ここの卒業生はイギリスのみならず世界中で活躍していてウィリアムとケイトさんのお子さんのナニーもこの学校の卒業生です。シャーロット王女の洗礼式の際に、なんだか変わった服装の女性がテレビや新聞に映っていました。この女性がナニーのマリア.テレサ.テュリオン.ボラロ(スペイン人)です。彼女が着ていたのはノーランド.カレッジのユニフォームだったのです。学校を卒業してもユニフォームを着ているナニーがいますが、現在はそれは「特に一般の目を引く」ということで義務付けられてはいませんが。

9月にヴィーガン料理の修業のためにBathの町で1週間過ごしましたが、滞在先のすぐ近くにこの学校がありましたので、私も学校に行く途中でユニフォーム姿の彼女たちたちを毎日見かけました。(現在は男性も入学が可能)









ノーランド.カレッジは1892年に設立されました。入学の倍率は4倍と言われます。筆記試験、口頭試験の後約50名の新入生が子供に関わるキャリアを目指すべく3年間の訓練を受けますが、それは講義のみならず料理や裁縫、また病院、幼稚園などでの実技他、自己防衛(子供防衛)のための訓練など8時から4時までびっしり詰まった時間割をこなします。そして最終学年は実際に家庭に入っての訓練があります。


 
 
 
 
 
 
 


こうして晴れてノーランド.カレッジを卒業した人は世界中で活躍しています。ロイヤルファミリー他、伝統的な教育を続けたい貴族たち、両親が忙しいキャリアを持つ人たちなどです。

ここ100年くらい、ロイヤルチルドレンのナニーに求められることは随分変わってきました。特にダイアナさん(ウィリアムの母君)の時代からはその違いが大きいようです。それまではロイヤル.チルドレンの教育は完全にナニーに任せられていたのですが、ダイアナさんはウィリアムとハリーのナニーが彼らをmy babiesと呼んだのを聞いて、そのナニーを解雇するということが報道されたことがあります(事実かどうかは別として)。ウィリアムとケイトさんに至っては、最初はナニーを雇わないことを考えていたそうです。(結局はお二人が公的業務をするにはナニーが必要と判断されたようですが)

両親に育てられるのが子供にとっては最適の教育と考えられる今日、ナニーの職自体が昔と比べて限界があるように思っていましたが、ノーランド.カレッジの事を知れば知るほど、特に仕事が忙しい夫婦にとっては安心して子供を預けられる頼もしいナニーの需要は多くなってくるかもしれないと感じます。

幼児教育はとても大切であることは誰しも信ずることですが、その時代に合わせて教育内容も随分変わってきています。少し前までイギリスでの子供教育にケイン(鞭)はつきものだったようですが、現在ノーランド.カレッジではカレッジで勉強す学生のみならず、卒業生にまで子供に手あげることを禁じています。

Bathの町で会ったノーランド.ナニーたちは皆とても感じが良く、優しさに溢れていました。







11/14/2016

コーンウォールの海岸でのウォルナッツの最後の散歩

ここ数日、テレビや新聞で話題になっていること。

18歳のウィペット犬ウォルナッツが高齢のために自分で歩くことも食べることもできなくなった
ので、オーナーは安楽死させる決心をします。

元気なころのウォルナッツ
 
 



ウッズ氏はいつも通り海岸に連れていき、いつも通り過してウォルナッツを送り出そうと考えます。そしてフェイスブックで「一緒に歩きたい人はどうぞ」と呼びかけました。ところが当日海岸には犬を連れた人、人間だけで来た人など数百人が集まりました。

コーンウォールまで来ることができない人は、ウォルナッツを思いながら別の場所で散歩しました。ウッヅ氏にとっては18年間いつも一緒にいた犬です。仕事にも連れて行き、時にはガールフレンドが焼きもちをやくほど。



 
 
 
 
 
毛布にくるまれたウォルナッツの愛した海岸で最後の散歩。
 
 
 
 
 
 
 
 
全国から多くのメッセージが送られました。この詩も
そのうちのひとつで、ウォルナッツのウッズ氏に対する気持ちを表しています。
 
 
 
 
 
翌日、ウォルナッツはウッズ氏ご夫妻、他の2匹の犬たちに見守られながら静かに息を引き取りました。
 
動物は、人間が誰しも持っている「美しいもの」を引き出してくれます。世の中の醜いものがいつも目の前に現れて、時には人間であることさえいやになることがあります。そんな時、動物を通して感じる人間の美しい心が唯一の癒しのような気がします。
 
更にウォルナッツのことを詳しく知りたい方は下記のリンクを訪れてください。
 
 
http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-cornwall-37955748
 

11/11/2016

戦没者追悼日

今日は11月11日。戦没者追悼の日です。3700万人という空前の犠牲者を出した第一次世界大戦は1918年11月11日に休戦協定が結ばれ、実質的に戦争が終了しました。この日はイギリスではRemembrance Dayと呼ばれています。11時(休戦開始の時間)には国中の戦争記念碑(それはどんなに小さな村でも見かけるイギリスのシンボルのひとつ)や人が集まる場所で(スーパーマーケットなど)2分間の黙とうが行われます。

実際にはイギリスではRemembrance Sundayといって11月11日に一番近い日曜にロイヤルファミリーを始め戦争で戦った兵士やその家族が官庁街であるホワイトホール通りの戦没者の記念碑(セノタフ)に集まり、11時に黙とうが捧げられます。この模様はテレビで中継されます。

この時期になると、多くの道行く人やテレビに出演している人たちが紙で作られたポピー(芥子の花)の花を胸に付けていますね。日本では赤い羽根募金がこれとよく似た募金活動ですが、ポピー運動は、戦争で負傷した、または精神的に病んでいる兵士、またその家族をサポートするチャリティのためのものです。これは戦場となった場所に多くの芥子の花が咲いていることで「芥子は戦場で戦死した兵士の血から生まれる花」という意味があり、特にフランダースの激戦のあった場所に咲くポピーをあるカナダの軍医が詩の中で謳ったことに始まります。(In Flanders Fields  「フランダースの野にて」の詩は後でご紹介します)




 
 
 
募金運動で使われるポピーや戦没者記念碑に捧げられるリースなどを作っているのがポピー.ファクトリーです。現在はロンドンのリッチモンド地区にあるこの非営利団体であるこの工場ではそのような戦争被害者30人の人が働いていて毎年1100万のポピー、135000のリースが作られています。
 
 
先日、バッキンガム宮殿で見かけた騎馬のおまわりさんと、そして馬もポピーをつけていました。戦争の犠牲になったのは人間だけではありません。第一次世界大戦では犬、馬、伝書鳩など900万の動物が死んでいます。高級ホテルが立ち並ぶパークレーン通りにはそのような戦争で亡くなった動物たちの記念碑もあります。
 




In Flanders fields the poppies blow
Between the crosses, row on row,
That mark our place; and in the sky
The larks, still bravely singing, fly
Scarce heard amid the guns below.

We are the Dead. Short days ago
We lived, felt dawn, saw sunset glow,
Loved and were loved, and now we lie
In Flanders fields.

Take up our quarrel with the foe:
To you from failing hands we throw
The torch; be yours to hold it high.
If ye break faith with us who die
We shall not sleep, though poppies grow
In Flanders fields.

第一次世界大戦から始まった戦没者追悼日ですが、イギリスではそれ以降も第二次世界大戦、フォークランド戦争、湾岸戦争、イラク戦争などさまざまな戦争で命を落とした兵士が多く、この追悼日は今では第一次世界大戦のみならず全ての戦争で亡くなった人たちを追悼する日です。ポピーを胸につけるこの時期、私の心の中にはイギリス人のみならず、日本を含む地球上の全ての戦没者、そしてシリアなどで今でも戦いの犠牲になったひとたち、動物たちがいます。

11/05/2016

キューガーデンでの勉強会

 
仕事が少なくなるこの時期は私が属しているブルーバッジのギルドやJRTGAがさまざまな勉強会を催してくれます。昨日はJRTGA(英国日本語観光ガイド協会)でキューガーデン専門のガイドによる温室をメインにした勉強会でした。今年初めにやはりJRTGA主催で山中真澄さん(キューガーデンのキュレーター)のレクチャに参加したのに続き2回目のキューガーデンレクチャーです。
 
 
ご存知のようにキューガーデンは世界遺産に登録されている植物園です。この時期のキューガーデンも素敵です。だいぶ前に「家庭画報」の雑誌でキューガーデンの四季を特集した際にコーディネートをさせていただきました。カメラマン兼ライターは南川三次郎さんでしたが、その時は本当に「キューガーデンは一年を通じていつも美しい」と感じました。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
シャーリー.シャーウッド.ギャラリーで行われている「フローラ.ジャポニカ展」は日本の植物をテーマにしたボタニカルアートをメインに扱っています。そこでは「日本の植物学の父」と呼ばれる牧野富太郎や服部雪斎、伊藤圭介の植物画やキューの蔵書のひとつシーボルトの「フローラ.ジャポニカ」他、現在日本で活躍されている角野葉子さん、吉田佳子さんら30名以上のボタ二カル.アーティストの作品が展示されています。 いつも行こう行こうと思いながら今になってしまいました。       
 
 
会場内は写真撮影が禁止されていますので、看板だけ。
 
 
 
 
 
ここ何年間郊外での仕事が多く、ロンドンに出る機会が少なくなってきました。それで日本人の同僚に会うことも珍しいのですが、昨日はレクチャーの後久しぶりでイタリア料理を食べながらおしゃべりに花が咲きました。
 
いつも色々な興味深い勉強会を企画して下さるJRTGA(英国日本語観光ガイド協会)の役員たちに感謝です。
 
 
 
 

11/02/2016

EU 離脱でそろそろやってきたポンド下落

ずっとブログで「お知らせしなくっちゃ」と思っていた新しい5ポンド紙幣。こちらでは‘プラスチック.ノート’と言っていますが正確にはpolymer note、ポロプロピレン(何なのか私にはさっぱりわからないのですが)で出来ているそうです。数か月前から出回っていますが小さくて、子供銀行の紙幣みたいです。






新しい紙幣は、洗濯機の脱水にも耐え、今までの紙幣の2,5倍長持ちするとか。この写真を撮るためにお財布から取りだしてアイロンをかけましたが、その後の「注意ーアイロンをかければ溶けます。」を読んでびっくり。そうだ、プラスチックは熱に弱いんですよね。幸い、私の5ポンドは大丈夫でした。

表にエリザベス女王、裏側は「イギリスの英雄調査」で人気一位になったウィンストン.チャーチルです。男ばかりだと問題なので、次に発行される10ポンドプラスチック紙幣は女流作家のジェイン.オースティンが登場するそうです。







お札の片方に透明になっている部分があって、女王とビッグベンが描かれています。これは偽札作りを難しくさせるためのもの。







100年も使われた紙の紙幣がプラスチックに変わります。時代の流れを感じますね。カナダではすでにプラスチックのお札は使われているようです。人物に関しては女王はいつもお目見えしますが、イングランド銀行では「他は全て亡くなっている人の顔を採用します」とのこと。

さて、お金のことばかりで恐縮ですが、最近EU離脱から来るポンド為替の下落がニュースをにぎわせています。ポンドがあまりに弱く、外国から入ってくる品物が急激に高くなりました。食料、車、ガソリン、洋服....ほとんどじゃないですか!その代り外国人はイギリスに来やすくなりましたね。ロシアからイギリスにやって来る人は22%、アメリカから来る人は20%、中国から来る人は16%、そして日本から来る人たちにとっては32%も物価が下がったのですから。

そして今、ドライバーガイド協会の来年4月からの料金設定の話し合いでメンバー同士のメールが飛び交っています。今までのんきに考えてもいなかった事柄が次々にメンバーから指摘されています。ある同僚が2年半前に£32,000で買ったドイツ車が今£45,170だそうです。ガソリンの値段も上がっています。私たちドライバーガイドにとっては2017年は厳しい年になりそうです。車を使ってのご案内を止めようと考えている同僚も出て来たようです。さて私は....いつも「後1年は頑張ってみよう」と思いながら年を越してきました。今年も「少なくともあと1年は....」と考えています。私にとってドライバーガイドの仕事は単に仕事としてではなく、より深くイギリスという国を知るため、日本人がこの国に来て求めるがものが何であるかを知る上でとても大切なことなのです。

こうして同僚が少なくなっていくのはとてもさびしいことです。EU離脱からの影響をそろそろ身に感じてきたこのごろです。