11/25/2014

‘ダウントンアビー’と‘グランチェスター’

人は仕事以外の時でも、無意識のうちに仕事のことに密接した状況を作ることがよくあります。それが癖になることも.....

映画関係の仕事をしている友人は、テレビドラマを見る時に真っ先にエキストラに目がいくそうです。「ああ、まだあのエキストラは仕事しているんだなー」とか、「最近、頻繁に出てるなー」とかです。私は観光ガイドという職業柄、テレビでドラマを見る時は「ここはどこで撮影されたのかな?」と知らないうちに建物や、風景のことを考えてしまいます。

レイコックの場合は、ジェイン.オースティンの時代物他、‘ハリー.ポッター’などしょっちゅう映画やテレビドラマに使われていますので、すぐにわかります。何せレイコックは村自体をナショナル.トラストが管理していますので、昔のままの状態で残っています。

先日、コッツウォルズにあるバンプトンに行ってきました。ここはテレビの連続ドラマ‘ダウントン.アビー’の中でダウントン村として使われた村です。どこも‘ダウントン.アビー’に出てきそうな建物ばかりです。「ウーン、マスューの家はどこだっけ?」と、考えながら周りましたが、結局ははっきりわからないまま帰ってきました。再度、じっくりドラマを見てからまた行ってみましょ。

村に着いて、まずは土木作業をしていた男の人に「ダウントン.アビーのロケはどこで行われたの?」と聞いたところ「僕は知らないけど、あそこのカフェの人が知っているよ。一緒に行ってあげよう。」と案内されたバンプトン.コーヒーハウスです。




「道を渡ってまっすぐ行って、茶色の門を通り越して、突き当りを右に行って.....教会の近くだよ」と。全部覚えられませんが、「この辺だろう」と見当をつけて、とにかく行ってみました。




 
 
 
 
また最近、イギリス人の美男を絵に描いたような役者ジェームズ.ノートンが演じる‘グランチェスター’というテレビドラマのロケ地にも行ってきました。この方は、村の名前もまさにグランチェスターといって、大学の町で有名なケンブリッジのすぐ近くです。ドラマの内容は、戦争経験のある若い牧師が、グランチェスターの村で起こる殺人事件を友人の刑事と共に解決してゆくというもの。
 
私は内容そのものより、美しい村、そして戦後の人々の暮らしやファッションに興味があります。友人は、牧師役の俳優にぞっこんです。日本でも放映してほしいなと思うドラマのひとつです。
 
 
 
 
 
 
 
 
この写真を撮っていたら犬を連れたご婦人が話しかけてきました。「あなたも‘グランチェスター’ファンなのですね。実は、私、あの撮影の時はエキストラをしたのよ。私だけではないわ。村のほとんどのひとがエキストラになったの。牧師館の窓は『時代に合わない』と塗りかえられたの。」と色々おしえてくれました。
 
このドラマのおかげで村も有名になりつつあるようです。
 
聖アンドリューと聖母メアリーに捧げられた教会は1100年の部分も残っていますが、尖塔は15世紀初期に建てられました。
 
 
 
人々を中に招いていているようにちょっとだけ開かれたドアから中に入ってみました。
 
 
 
聖壇所(内陣)は1360年のもので、この教会で一番美しいところです。
 
 
 
牧師館は残念ながら行きませんでしたが、1685年に建てられたとか。詩人ルーパート.ブルックが住んだこともあり、愛する牧師館を「グランチェスターの古い牧師館  The Old Vicarage, Grantchester」という詩に
しました。
 
 
 
第一次世界大戦で出兵したブルックはここに戻ることを夢見ながら1915年に亡くなります。3人の息子全てを戦争で失った母親は、後にこの家を買い取り、ブルックの親友に委ねます。その牧師館にはその親友の子孫が1979年まで住んでいましたが、現在は「百万ドルを取り返せ」「ケインとアベル」などの作品で知られる英国の有名作家ジェフリー.アーチャーが住んでいます。
 
この国で観光ガイドしていますとお客様が「本当に絵になるような景色ですねー」とか、「まるで映画の世界ですねー」とかおっしゃいます。私も本当にそう思います。
 
 
 
 

11/17/2014

霧のストーンヘンジ

一昨日は、ストーンヘンジとグラストンベリーにご案内する仕事でした。ロンドンを朝8時に出発。先日同様霧の濃い日で高速道路からは両側の景色は全く見えず、前方を走る車が一台見えるのみの時もありました。

実は霧の中のあの巨石環状群も、それはそれは素敵です。ストーンヘンジだからこそ、霧に包まれた方が幻想的で素敵なのかもしれません。


 
 


ストーンヘンジの後は一挙にグラストンベリーへ。スピリチュアルなことに興味をお持ちのお客様との会話がはずみます。

グラストンベリーは、キリストが最後の晩餐に使い、そして十字架にはりつけにされたイエスの血を受けとめた聖杯が埋められているとされる場所です。

その杯は聖母メアリーの叔父であったジョーゼフ.オヴ.アリマテアによってイギリスにもちこまれ、グラストンベリーにある丘‘トー’のふもとに埋められたとされています。英語ではHoly Grailと呼ばれるこの聖杯を探し出すために、これまでの歴史の中でどれだけの人がここを訪れたことでしょう。特にアーサー王と円卓の騎士の話は有名です。

グラストンベリーに着くころには霧もすっかり上がりました。まずはヒーリングパワーがあるとされる水が出るチャリスウェルへ。ところがこの日はちょうどグラストンベリーフェアーの日で、駐車場は全く見つからず、チャリスウェルはお客様だけで見学していただきました。

その間に、次に行くグラストンベリー.アビー(修道院の廃墟)見学のための駐車場探し。ところが何とラッキーな事でしょう!アビーの隣の駐車場は最後の一台分のスペースがあり、そこに入ることができました!私の車の後はロープがかけられてしまったのです。お天気といい、駐車場といい、ついていることばかり。何かのパワーを感じますねー。

ストーンヘンジは霧で最高の効果をもたらしてくれましたが、アビーのほうは青空が一番。写真をご覧ください。








 
 
ウェストミンスターアビーに続き、力のあった修道院の修道院長のための特別キッチンだけはいまだに完璧に残っています。
 
 
 
 
中のテーブルには当時使われた食器のレプリカが。
 
 
 
 
さすがにグラストンベリーは、スピリチュアル系のお店、レストランが多く、石を売るお店などは大賑わい。
 
16世紀の宗教改革まで、アーサー王のお墓があったとされる場所です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
町の中はお祭りで賑わっていました。
 
 
 
 
帰りにトーの写真を。
 
 
 
 
この日の走行距離はなんと550キロを超えました。今、妹と甥、姪が来ています。妹に話したらこの距離は函館、札幌の往復間と同じだそうです。でも、お客様と話しているうちにあっと言う間にロンドンに着きました。
 
今日から妹たちとコッツウォルズやリヴァプールなどに出かけます。
 
 


11/14/2014

幻想的世界

同じ場所でも季節によって、そして同じ季節でもその日のお天気によっては全く違う世界が見られるものです。

先日は3名のお客様をチルタン地方にご案内しました。コッツウォルズより知名度は低いのですが、ロンドンに近いこともあり私は時々ご案内する機会があります。


私の車でご案内する場合は、なるべく大きな道路は避けて本当のカントリーレインを使うようにしています。先日は霧の深い朝にチルタン地方に向かいました。


 
 
 
 
 
あまりに綺麗な森林があると、道端に車を停めて、ちょっとだけ森の住民になったように、落ちた枯草を踏む音を楽しみながら写真撮影です。
 
 
 
 
 
 
通りすがりの村も素敵な場所が沢山あります。それにしても霧のせいでこの日のチルタンはまた格別でした。
 
 
 
丘の上の風車が見えますか?初めはすっかり霧に隠れていましたが、歩いているうちにうっすら姿を現しました。
 
11月11日は第一次世界大戦の終戦記念日でした。村の戦争記念碑にはポピーのリースが備えられていました。
 
 
 
 
 
 
イギリスの家庭料理を食べてみたいというお客様からの強いご希望で、友人のところでランチ。チキンとベーコンのクリーム煮。そして庭で採れた野菜も一緒に。
 
 
 
 
この日はお客様が帰国される日。出発時間に十分間に合うようにヒースローに向かいました。「また来ます。」というお客様からの言葉が何よりうれしいものです。また是非、いらっしゃってくださいね。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


11/13/2014

「アガサ.クリスティとコーンウォールのツアー」  その2

さあ、ツアー4日目、いよいよコーンウォールに向けて出発です。こんなに親しくなったアガサ(?)に別れを告げて一路西へ西へとバスの旅は続きます。途中、昼食時に立ち寄ったのはTruroのシャーロッツ.ティーハウスです。人気のティールームなので予約をしたのは正解でした。満席の中、町や聖堂が見渡せる最高の席をいただきました。(写真では、ティールームの看板のすぐ下の2階の出っ張った部分)


 
 
ここに来たらいつもいただくのがコーンウォールのブルーチーズとクルミのチーズトーストです。ブルーチーズとクルミと洋ナシの組み合わせが絶妙です。
 
 
 
 
ここではでゆっくりしたかったのですが、先を急がなければいけません。階下にあるアンティークショップをちょっと覗いて再びバスで西に向かいます。途中セントマイケル.マウントの対岸で写真ストップ。バー島と同じく、潮の満ち引きで本土から離れてしまうこの島は1066年のノルマン人によるイングランド征服直前に、フランスのモンサンミッシェルのベネディクト修道会に譲渡されます。霧の中に見えるセントマイケル.マウントは幻想的で
素敵でした。時間があったら是非見学していただきたいところです。
 
 
 
 
 
次はミナックシアターです。断崖絶壁に立ち、ローマの円形劇場を思わせるこの劇場は1900年初期まではエニシダが茂る荒れ果てた土地でした。そこに劇場を建てたのはロウィナ.ケイドというひとりの女性でした。彼女は、50年という年月をかけ、数人の助けを除いてほとんどひとりで金銭面から石を積む労働にいたるまで貢献しました。今では英国のトップクラスの俳優たちがこぞって演じるユニークな劇場となっています。興味のある方は、是非ウェブサイトをご覧ください。
 
 
 
 
 
 
 
 
到着した時にはうっすらベールがかかっているほどの霧でしたが徐々に濃くなってきました。次の目的地は西の果て、ランズエンドです。車から降りた途端にどこが果てかわからないくらい濃い霧に包まれてしまいました。
 
 
 
 
 
 
道標のところは以前は写真屋がいて写真をとっていましたが、この日は霧が深く、「写真にもならない」と思ったのか、道標はぽつんとひとりで立っていました。(本当は私はこのほうが好き)
ここから
ニューヨークまでは3147マイル。日本まではどのくらいかなー?
 
 
 
 
英国では、よくチャリティ活動の一環で「ジョン.オーグランツからランズ.エンドまでサイクリング、ウォーキング」など行なっています。ジョン.オーグランツとはスコットランド本土の真北にあるところ。つまり日本で言えば日本縦断と言うことなのですが、道標によるとここから874マイル(1マイルは1,6キロ)とあります。もちろんランズ.エンドからジョン.オーグランツに行く人もいるわけで、ここがスタートとゴール地点の両方になるということです。この石の裏側はStart地点です。
 
 
 
 
ゴール地点で私たちを待つ、今回の最高に良かった
運転手のイアンです。
 
 
 
 
こうして「霧の中のランズエンド」をモニャモニャと歩いた後は一挙にその日から2泊することになるセント.アイヴズに向かいます。日も暮れてチェックインした後は部屋で夕食までの時間をゆっくりすご過ごしました。
 
翌日はまずバーナード.リーチの工房であったポッタリーを見学。1920年にリーチが濱田庄司と共に築いた工房です。
 
 
 
 
 
 
その後テート美術館やバーバラ.ヘップワースの住んだ家を見学しました。ヘップワースの家では彼女の彫刻が並べられた庭を散歩しました。自然の植物とヘップワースの作品がお互いに美しさを更に補って、ここには何とも言えない素敵な空間が沢山あります。
 
 
 
 
この日は10月も終わりと言うのに暑い日でした。テート美術館の下の砂浜ではなんと泳いでいるひとも。コートにマフラーの私たちは、人から言われるまでもなく自分で異様に感じていました。もちろん次第にコートもマフラーもとって薄いセーターだけで海岸を散歩しました。気持ちの良かったこと!岬の丘に登るまでは......
 
 
 
 
丘の上に登ったら風が強い。あわててコートを着て、帽子も飛ばないように。
 
 
 
 
丘の上には聖ニコラスに捧げたチャペルがあります。
 
 
 
 
チャペルの中にガイドらしき人がいました。「リーチ工房には行きましたか?」と話しかけてきたのですが、「ほら、その人の足の下にリーチが作ったタイルがありますよ。」 えっ?足の下に?タイルの上に立っている人に「ちょっとのいてください。」とも言えず、彼女が動くまでじっと我慢。そしてついに現れたのがこのタイルです。本当かなー?本当にバーナード.リーチの作品なのかなー?と半信半疑。もし本当にそうであったなら、このように人の歩く場所に置きっぱなしにしておくかしら?お客様も私も思わずウーン!と唸ってしまいました。
 
(ガイドも時には間違ったことを言うことは、ガイドである私が一番良く知っています)
 
 
 
 
 
セント.アイヴズでの最終日の半日は皆さん自由行動。芸術家の町というだけあって、おもしろいおみやげも手に入れたようです。私はと言いますと、本当はリーチ工房に戻って小さな器でも買おうかしら?とも思いましたが、午前中の工房、美術館めぐり、砂浜の散歩、丘の登山(おおげさですが)で、かなりくたくた。翌日ロンドンにもどるための列車の切符の確認などをして早目にホテルに戻りました。
 
翌日は、しっかり朝食をとった後、タクシーでセント.アイヴズの駅へ。一等車と聞いていたのですが、座った席がどうも普通っぽい。早目に気が付いて良かったです。トーキーの駅で予約した指定席はなんと二等車の席でした。早く気がついて良かった!
 
早速一等車に移動。なんと言う違い!正に飛行機のファーストクラスのような快適さでした。
 
 
夕方ロンドンのパディントン駅に到着。この日はホテルに直行の予定だったのですが、「テレビに写し出されるポアロの住むマンションを見てみたい。」というお客様のご要望で、ワールドブリッジ社が特別手配してくれたバスで東にあるチャーター広場に直行しました。
 
ああ、ここです、ここです。いつもいつも見ているポアロのマンション。私もお客様に言われるまでは、このマンションがここにあることも知りませんでした。(提案して下さったポアロさんに感謝)
 
 
 
 
 
 
こうして「アガサ.クリスティ.カントリーとコーンウォールを巡る旅8日間」は終わりました。アガサ.クリスティは私も大好きです。トーキーに行く度にミス.マープルとポアロが更に身近に感じられるから不思議です。まるでふたりとも実在した人のようです。いいえ、もしかしたら実在したのかもしれません。少なくともアガサファンにとっては。ふたりにSee you soon.と言いながら次のツアーがまたまた楽しみになってきました。