11/29/2019

スリにご注意。

ロンドンは、他のヨーロッパの大都市に比べれば比較的治安は良いほうだと思いますが、それでもスリや置き引きが荒稼ぎしていることに間違いはありません。ロンドンで観光にご案内する際は、必ず一度はスリに逢わない遭わないようにするには・・・・・と説明します。こちらのスリはプロです。全く気が付かれないように技を磨いています。ハリーポッターの中に出てくる「魔法の学校」と同じようにスリの学校があるの?と思うくらい。

ロンドンで特に注意が必要なのは、ショッピング店街の他、大英博物館、ナショナル・ギャラリー、そして衛兵交替が行われるバッキンガム宮殿です。




ロンドンのスリは、危害を加えて無理やり持っていくことはしません。じっくり観察してスキがある人や瞬間を狙ったものが多いようです。ですから、スキを見せない、貴重品は体から離さない・・・・など防ぐ方法はあります。2人以上のグループでスリをする場合が多いようです。

日本の旅行会社からお仕事をいただく場合に「口が酸っぱくなるほどスリがどこにでもいることをお客様に知らせてください。」と言われることもあります。バスを降りるたびに注意してくださいと言われることもあります。

でも、そうしたからと言って完ぺきに被害が防げるわけでもありませんし、そのために観光の楽しみが半減しては困ります。いくら注意しても、最後はお客様ご自身の自己防衛しか防ぐ方法はないのです。あまりしつこく言うと、「そんなにスリが沢山いるのですか?」とか、「スリが怖くて見学に集中できない。」と言われるのもご尤もだと思います。私がこれまでにご案内している最中にスリに遭われた方は数人しかいらっしゃいません。確率から言えば0.00・・1%です。

スリのことを極度に気にせずに観光を楽しむことが大切だと思います。

この看板は、バッキンガム宮殿に近いセント・ジェイムス公園で見かけたものです。





そういう私も、実はカナダで大きな被害に遭ってしまいました。ラーメン屋さんでラーメンを食べることに夢中になっていて、ハタと気が付いたときにはバッグ丸ごと盗まれていました。現金はもちろんのこと、クレジットカード、パスポート、航空券、列車の切符、ホテルのヴァウチャー、レンタカーのヴァウチャー、免許証・・・・そして「カナダでの一切の支払いは私にまかせて」と両親、妹から預かっていた○○万円。

しかも、その時に延泊せざるを得なくなってカナダの大使館で発行してもらった新しいパスポートにはバーコードが付いていなく、数年後の息子の結婚式(アメリカで)に危うく出席できないところでした。アメリカではバーコードのついていないパスポートの所持者の入国は認めていませんでした。

これまでに、現金を盗まれた人、パスポートをなくした人の話は聞きましたが、全て盗まれてしまったのは・・・・・私だけ。

でも、何事も「勉強」と思えば気持ちもおさまります。私はこの経験があってから、「どんなことでも、最後はなんとかなる。」ということを学びでした。

皆さんも万が一スリに遭ってお金を盗まれても、パスポートがなくなっても「必ず日本に帰れる。」と信じてできるだけイギリス滞在をエンジョイすることです。


注)私からのアドバイス。貴重品はバッグの奥に入れ、万が一スリの手が入ってもすぐには見つからないところに置いておきましょう。このアドバイスを実行したある方は、ナショナル・ギャラリーのトイレでスリに遭った際の被害はバッグの上のほうに入れてあった片方の手袋だけで済みました。




11/27/2019

修道士カドフェル

その後のジェイン・オースティンの旅に関しては、近いうちに又報告させていただきます。今日は、イギリスのテレビドラマで人気を得た「ブラザー・カドフェル」に縁のあるシュルーズブリーを訪れた時のことをお伝えします。

修道士カドフェル(Brother Cadfael)はエリス・ピーターズが12世紀のイギリスを舞台に書いた連作ミステリー小説です。彼はシュルーズブリーにある修道院(シュルーズブリー・アビー)で薬草ガーデンの管理を任されていますが、その知性、信仰心、薬草に関する専門知識などによって犯罪を解いていきます。

テレビのシリーズは1994年から1998年までドラマとなってイギリスで大人気。そのためのアトラクションもできて、私も数回お客様をご案内しました。修道院での暮らしを再現したものでしたが2001年に閉鎖されました。

イングリッシュローズの生みの親デイヴィッド・オースチンは「修道士カドフェル」というバラを作り、薔薇愛好家にはファンが多いのです。

シュルーズブリーはシュロプシャー州にあるマーケットタウンです。15~16世紀に建てられた白黒の建物(ハーフティンバー)を含む650件以上がリストに登録されています。(listed buildingsとは保存指定された建物)またチャールズ・ダーウィンが(進化論)生まれた町でもあります。








小説の舞台になっているシュルーズブリー修道院は、ウィリアム公爵のイグランド征服の際にやってきたロジャー・ドゥ・モンゴメリーが1083年に設立したベネディクト派の修道院です。ロジャーは、その後シュルーズブリー伯爵のタイトルとイングランド南部を含む広大な土地を与えられ、その財産は国内総生産の3%に及んだということですですから修道院の一個か二個は簡単に作れたと思うのですが、ここに埋葬されたという事実から、彼にとっても特別な場所であったことがうかがえます。




内部はノルマン建築の部分が多く残っています。




おっ!修道士カドフェルのステンドグラスがあるではありませんか!カドフェルの存在が小説の中とは言え、実際に舞台となった修道院にも感じられます。




ロジャー・ドゥ・モンゴメリーのお墓



Cadfaelの読み方ですが、英語読みは「カドフェル」、日本では「カドフィール」と発音されることが多いそうですが、実はこの名前はウェールズの名前。ウェールズでは「カドヴァイル」と読まれますが、作者によれば「カドヴェル」が正確な発音となっています。このブログでは英語読みを使うことにしました。

この日の朝は、ラグビー・ワールドカップで決勝戦が行われる日。朝早くからホテルのラウンジのテレビの前には人が集まっていました。




イングランドが南アフリカに負けたことを知ったので、その後のナショナルトラスト所有の館に行った時でした。館のスタッフもがっかり。訪問客と慰めあっていました。











11/26/2019

ジェーン・オーステンの旅 その2

ハドンホールは、陶器が好きな方にはミントンの陶器のデザインで知られていますが、建物自体深い歴史を持ったところ。現在はラトランド公爵の弟君とそのご家族が住んでいます。私たちが訪れた時もひんやりしていて、つい「冬は冷えるだろうなー。」と思っていると、城主の奥様がまるで乗馬でもしそうな格好でスーっと通られて(ハウスガイドが教えてくれました)このお城に急に生活感が見えてきました。

暖炉の火は体だけではなく心まで温めてくれます。この暖炉の前で夜が明けるまで過ごせたら素敵でしょうに。



最古の部分は11世紀ですが、特に16世紀までの部分が(チューダー時代)中心となっています。

何百年の間に一体どれだけの人がこの階段を上ったことでしょう?その減り具合からも歴史を感じます。













ガラスは昔は大変高価だったもの。ボトルを伸ばして作られました。私にとって今回の新しい発見は・・・・長い歴史の間にそれぞれのガラスの鉛の枠が歪んでしまったと思っていたら実はそうではなく、暗い部屋を太陽の光で照らすには太陽の位置に合わせてわざと角度を変えているとのことでした。「人って不便であれば、それなりに工夫をするもの」ということが益々確信できて嬉しかったです。





お庭からの景色もまた素晴らしく、雨上がりだったせいもあって空気がとても美味しく感じられました。






19世紀にはこの城主の娘の駆け落ち事件が本になりハドンホールは更に世に知れるようになりますが、そのせいか訪れるたびに物語を感じる建物です。




11/25/2019

ジェイン・オースティン縁の場所を巡る

イギリスで撮影された映画やテレビドラマは日本でも人気があります。映画では、「ハリー・ポッター」や「レ・ミゼラブル」「王のスピーチ」「007」「高慢と偏見」「女王エリザベス」「ブリン姉妹」・・・・・・テレビでは「ミス・マープル」「ポアロ」から「刑事フォイル」「ダウントン・アビー」「ヴィクトリア」「ザ・クラウン」「エンデヴァー」「刑事モース」「高慢と偏見」「知性と感性」・・・・・イギリステレビドラマは質が高いことで知られ、海外のテレビ局を通して外国でも見ることが可能なものが多いのです。
注)これらの正式な日本語タイトルは必ずしも上記ではありません。

私が特にご案内することがあるのは「ダウントン・アビー」「ハリー・ポッター」「高慢と偏見」やアガサ・クリスティ縁の場所です。(2014年11月10&13日のブログで紹介しました。)

今回は10月から11月にかけてジェイン・オースティン関連の場所をご案内した時の模様をお伝えします。

まず向かった先はスタネッジ・エッジ。途中の景色も実に素晴らしく、何度も車を停めて写真撮影。





私もスタネッジ・エッジには行ったことがありませんでした。広大な平原に長さ6,4キロの岩山まで行くにはカーナビは通用しません。途中何度も人に聞いて探しました。ここには、映画「高慢と偏見」でキーラ・ナイトリーが立った崖があります。「本当にこっちの方角でいいの?」と半信半疑で荒野の中の一本道を進みます。




やっとそれらしき場所に来ました。道端に車が20台ほど停まっています。(この写真は少し登ったところから撮影しました)




崖に登るための道には途中まで石が敷かれています。スタネッジ・エッジはその昔砥石のための石採場だったので、この敷石は石を運ぶための馬用の道だったのかもしれません。

スタネッジの語源はStone Edgeからきているそうです。石のへり・・・・・まるで包丁のような感じの岩山が左に見えています。






途中からは正に登山。普段山に登り慣れている人、私みたいに平らな道しか歩いていない人はここで差が付きます。崖がだんだん近づいてきます。もう少し!




この「もう少し」がなかなかそうはいきません。風のためによろけながら。しまいには鼻水が出てきて、10歩歩いては休み、また10歩・・・・・・

やっと到着。なんとロッククライミングをしている人が何人かいました。私たちが登ってきた坂ではなく、崖をロープで登れば確かに速いけど。




さて、キーラ・ナイトリーが立った崖はどこでしょう? 探しているうちに、どうでも良くなってきました。皆よく似た岩です。「例え同じ岩ではなくともいい。ここまで来たことに価値がある・・・・」と皆納得。




その後、同じ映画に使われたラムトン・インの旅館の内装に使われたハドン・ホールに向いました。





11/24/2019

ノー・モア・プラスチック !!!!!

今年は9月以降は日本での台風、イギリスでの洪水と、「また?」という言葉が頻繁に出る天災が続いています。このところ毎日のように洪水警報が出ています。今日は友人の住むデヴォンのニュートンアボット付近に警報が出ました。近年、これだけあちこちで被害が相次ぐと、何か理由があると思わざるを得ません。

地球の温暖化は、否定する人もいます。「天災は単に偶然の出来事で、温暖化や環境破壊とは関係ない」と。でも環境破壊は近年着実に人間の手によって行われています(熱帯雨林の伐採や空気、地上、海の汚染・・・・)。温暖化が関わっていると信じない人でも、環境破壊が行われていることは確実なのですから、それを止めるよう努力するのが人としての義務ですよね。

先日は国連のサミットが行われる直前に、スウェーデンの15歳の女の子グレタ・サンバーグに共感した人々が(多くが若者)世界185か国で一斉にプロテストを実行しました。イギリスでも日本でも。

ヴィーガニズム(動物を搾取することなく生きること)のトレンドがここ数年急激に増えている理由にも、単に動物愛護、健康だけではなく将来益々環境破壊が激しくなることを心配する人たちが多くなっていることが挙げられます。

例えばプラスチック。プラスチックは燃やせば有害ガスを発生し、土に埋めても何百年も分解されることなく残り、海に流された多くのプラスチック製品は、魚介類、鳥たちが飲み込んだり、絡まったりして犠牲になっています。

先日、お客様を4泊のツアーにご案内ました。たったの5日間の間に、この国でのプラスチックに対する活動を多く目にしました。

まずは、ベイクウェルのアンティークショップで買い物をした際にいただいた袋。植物からできています。




ラッドロウでは町全体でプラスチックを締め出そうと呼びかけていました。プラスチックは思いがけない物にも使われています。例えば歯磨き粉などに使われ、肉眼でも見える粒子もプラスチックで作られているものが多いとか。




ナショナルトラスト所有の館の売店では特にプラスチック関係の書物のコーナーがありました。




プラスチック・フリーの社会も徐々に現実的になってきていることは、将来に向けてちょっとずつ希望の光が見えかかっているように感じます。

11/23/2019

ウォズドゥンマナーのクリスマス



昨年に引き続き、19世紀後半に金融業で財をなしたロスチャイルド家のひとりであるファーディナンド・ドゥ・ロスチャイルド男爵によって建てられた館ウォズドンマナーのクリスマスディスプレイにお客様をご案内してきました。

ウォズドン?ウォデズドン?ワデスドン?ワズデン?・・・・・・
この館の呼び名は、日本語でも英語でも色々あって、館を訪れるたびにスタッフに訪ねるのですが、その度に違った答えが返ってきます。日本の方とこの館のことを話す時も、私の発音は一定ではなく、お客様に「本当はどういう風に発音するのですか?」と聞かれます。(因みに地名や建物の名前は一般の人が使う発音、地元の人が使う発音、そして館であればその持ち主が使う発音に分かれることがあります。以前、館の主が使う発音が正しいと思ってそれを使っていたら、「その発音は館の主だけが許される特権という場合があるから気を付けて」と言われて驚いたことがありました。)英語をそのまま発音すれば「ウォデズドン」ですが、これを早口で言うと「ウォズドゥン」に聞こえ、地元の人の発音はそう聞こえます。それで私はこれに近く、日本人に言いやすい発音で「ウォズドゥン」と呼ぶことにします。間違っていたらごめんなさい・・・・です。





さて、ファーディナンド男爵に後継ぎがいなかったために館は妹に受け継がれ、次の相続者がナショナルトラストに寄付しました。ただ、その純粋な目的は館とその美術品を将来も維持することにあるために、現在でも運営にはロスチャイルド家が深く関わっています。私たちが訪れたその日の朝も、4代目ロスチャイルド男爵が館を訪れたと館のハウスガイドがおしえてくれました。

ここのクリスマスディスプレイは世界的に有名で、時間指定で予約をしなければならず私が予約した際も(一か月くらい前)、空きが少なく希望した時間の切符は売り切れでした。

さて、昨年も来ましたが、今年のテーマは音楽です。それぞれの部屋のディスプレイはクリスマスの音楽に因んで工夫がしてありました。




ダイニングルームに流れていた曲は 「I Saw Three Ships (Come Sailing In)(クリスマスの朝、3隻の船がやってくるのを見た)」というクリスマスの歌です。テーブルにも、ツリーにも船が飾られています。







初めてクリスマス時期にここを訪れた時にあまりに斬新なオブジェにびっくりしました。割れたお皿が嬉しくて飛び散っているようなシャンデリア・・・・・・








今回は時間もたっぷりありましたので、ガーデンの照明を使ったディスプレイも楽しむことができました。










恒例のクリスマスマーケットも賑わって。。




一足早いクリスマスの雰囲気を味わいました。
寒さも増した今日この頃です。皆さんも風邪をひかないよう気を付けてくださいね。

11/22/2019

ストウ・ハウス

ストウは風景ガーデンとしてイギリスでは最も有名なガーデンのひとつで、このブログでもこれまでに数回紹介させていただきました。特に我が家から車で30分の距離なので、友人やお客様をご案内する機会が多いのです。風景ガーデンは季節、天候によって全く違う景色や雰囲気になるので行くたびに新鮮な感じがします。

少しくらい曇っていても水に写る景色にため息。







長い間座っているこのカップルには言葉は必要ない?




1月2月はとても寒いのですが、スノードロップに出会えます。(ここではストウドロップと呼ばれています。)






陽が沈みかけたストウ。




先日も、特にストウを希望されたお客様がいらっしゃったのでご案内しました。ラッキーなことに、この日は晴天。秋も深まり、コートや手袋が必要な季節ですが、冷たい空気が返って心地よく気持ちの良い散歩を楽しみました。






17世紀後半、コバム子爵は父から譲り受けた家の(ストウハウス。現在はストウ・スクール)改築、増築を始め、19世紀には広大な土地にヴィクトリア女王も羨むほどの豪邸が完成しました。イギリスのみならずヨーロッパ中から王侯貴族がストウハウスを訪れています。また一族は長い間政治にも関り、歴史上父息子と2代続けて総理大臣になったのは2組だけですがその両組がこの家系から出ています。中でもウィリアム・ピット父子は有名で、息子は24歳で歴代最年少の首相になっています。

世襲のタイトルも子爵からバッキンガム侯爵、バッキンガム公爵に昇格しますが、2代目のバッキンガム公爵の時代に大きな借金を抱えるようになります。(公爵のタイトルを得る条件として当時のリヴァプール首相を支持することが義務付けられたために一族は多額の費用をこれに充てました。)結局この2代目バッキンガム公爵の代でなんと今のお金にして1億ポンド以上の借金を背負ってしまいます。

一族の財産は土地、建物の他家具や名画までオークションにかけられます。その息子である3代目バッキンガム公爵は1889年に亡くなりますが、男子相続者がいなかったためにバッキンガム公爵のタイトルは途絶え、土地、館は娘に受け継がれます。彼女の一人息子は第一次大戦で戦死、その後売却によって所有者が数回変わりますが、結局1922年にはストウ・スクールを運営する組織に売却され、1989年に建物以外のガーデン(現在のThe gardens at Stoweストウガーデン)がナショナルトラストに寄付されます。

さて、今回はその建物であるストウハウスを見学しました。今までガーデンには何度も行っていますが、建物を見学するのは初めてです。




ラッキーなことにツアーに参加したのは私たち3名のみ。ガイドさんは私たちの興味に合わせて案内してくださったので、とてもラッキーでした。

現在は年間寄宿、授業料のみで600万円というパブリックスクールです。もちろん学生が普段生活しているところは多分、もっと質素で実用性のある内装とは思いますが、特別な時にのみ使う部屋はまるで宮殿です。












ストウハウスの中からずっと遠くに見えるアーチ。このアーチはバッキンガムの町からストウに向かう長い一本道の突き当りに見えるアーチで、18世紀のものです。






ツアーは通常1時間に2回行われています。ストウのガーデンに行ったら是非ストウハウスも見学してください。ストウを所有していた一族の波乱万丈な歴史などがわかって興味深い時間を過ごしました。

(建物はナショナルトラスト所有ではないので、ストウの庭以外に建物の入場料がかかります。 https://www.stowe.co.uk/house )