2/19/2015

イギリスっておもしろい国

イギリスという国は知れば知るほど「おもしろい国だなー」と思います。そして、それは「えっ?こんなところにこんな物がまだ残ってるの?」と思う時に一層強く感じます。先日ブログに書いたガス灯もそうですが、今は使っていないもの、またはあっても実際には何の役目も果たしていないものなどがあちらこちらにあるのです。

日本では「使わないものはスッキリさせるために処分しましょう。」という文化です。イギリスは「使っていないものでも、たいして邪魔にならなければそのままにしておこう」という文化です。だから古いものが沢山残っているのだと思います。別に「古いものだからとっておこう」とか、「いずれ珍しいものになるかもしれないからとっておこう」といったように意識的に残しているのではないと思います。

先日英国一古いワイン商であるベリー.ブラザーズ&ラッドへ行ってきました。それは手作りの靴を作る老舗ジョン.ロブや、帽子の老舗ロックなどが揃った、バッキンガム宮殿に近いセント.ジェイムズ通りにあります。




さて、このワイン商のお店の看板をご覧ください。ワインには何の関係もないコーヒーミルの看板です。何故これがワイン商の看板になっているのか?それはベリー.ブラザーズ&ラッドは1698年にコーヒーを売る食料品店から始まりその時の看板と同じデザインの看板が、同じ場所にそのままぶら下がっているからです。写真を見てもおわかりのように、店頭のウィンドウの部分やドアは何度も何度も上塗りされたペンキの層が、デコボコしている鉄のように硬くなっています。






中に入って驚くのは、ワインがちょこっとしかないこと! 昨年できて商品が並べられている隣の二部屋を除けば、メインの部分は全くお店という雰囲気ではありません。そしてなんとワインの代わりに大きな秤が置かれています。多分昔コーヒーなどを扱っていた頃のものでしょう。

体重を計ることがファッショナブルだった時代、裕福な人たちはここで体重を計っていたとか。
 






顧客の体重の記録は何冊もの記録帖に今でもちゃんと残っています。近年には日本のおすもうさんもやってきたとか。136キロという数字が記録にちゃんと記されています。

それにしても「自分の体重だけは歴史に残したくない」と思うのは私だけでしょうか?







ではワインはどこにあるかと言いますと、それは地下です。そこには17000本が眠っているとか。この他に数か所に分かれた倉庫には数百万本のワインが保管されているというから驚きです。セント.ジェイムズ通りの地下には‘非売品’である100年以上前の埃に覆われたワインもあります。ミュージアムのようにそのまま永久保存されるのかと思いきや、会長さんの了承のもとに特別なチャリテーディナーなどで出されることもあるそうです。





もちろんここではベリーブラザーズ&ラッドのブランドのワインが人気です。人数が集まればワインテイスティングも可能です。




ラベルにも王室御用達の証拠である女王とチャールズ皇太子の紋章が描かれています。




ウィスキーで有名なカティーサークも実は1923年にベリー.ブラザーズ&ラッドで生まれたものです(2010年にエドリングトン.グループに売却)。印刷屋が間違って刷ってしまったという黄色のラベルは今でも変わりません。(本当はもっとクリーム系の色にするつもりだったとか)





1903年のある寒い日、当時のエドワード7世(ビクトリア女王の息子)の主治医に「王のために寒さを和らげる飲み物をつくるように。」と命じられ出来上がったのがブランデーと生姜のコーディアルでした。これが今ではベリー.ブラザーズのシグネチャー商品のひとつにもなっている‘キングズ.ジンジャー.リキュール’です。






実におもしろい話がたくさん詰まったベリー.ブラザーズ&ラッド。私は、ずいぶん昔、妹の結婚祝いに何か特別なものをプレゼントしたくて、ポート好きの相手に(‘これから妹をよろしく’と半分賄賂?)、ベリー.ブラザーズ&ラッドで年代物のポートを選んでもらいました。その時の買い物の楽しかったこと。「これがイギリス式、本当のサービス!」と感激したものです。ですから日本からの旅行者にも、そういう特別な体験をしてイギリスのお土産を買っていただけたら素晴らしいと思います。今話題のイングリッシュワインもあります。日本のお酒も地下に数種類見かけました。ワインは10ポンドくらいから買えます。

現会長のサイモン.ベリー氏(左)と店長のフランシス氏です。




ベリー.ブラザーズ&ラッドに興味のある方は是非この本もお求めください。





ベリー.ブラザーズ&ラッドは日本にも支店があるそうですから次回帰国の際は是非訪れてみようと思います。本店と同じサービスが受けられるかも?

www.bbr.com
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