ところが数年前から迷い猫のトムが来て住むようになってからDの暮らしも変わりました。トム専用のベッドルームができ、そこだけはお客様に開放できなくなりました。とてもシャイな猫なので、初めてのひとを見るとサッとどこかに消えてしまいます。外には出ない家猫なので、Dはキッチンの壁に穴をあけてトム用の小さなドアを作り、そこから続くガーデンに3畳くらいの場所を金網で囲ってトムの遊び場としました。トムはお天気が良ければその金網越しにDの庭を眺めています。
さて、Dのことですが有名なバーンズリー・ハウスと関係があるのでお話ししましょう。バーンズリーハウスと言えば、チャールズ皇太子やエルトン・ジョン他多くの有名人を顧客に持ち、世界的に知られたガーデナーであり、ガーデンデザイナー、講師、作家でもあったローズマリー・ヴェリーが住んだ家で、彼女亡きあとはホテルになりました。ローズマリーが生前友人として親しくしていたのがDです。時間がある時はローズマリーの庭仕事を手伝っていました。ですから彼がその昔、近くにあった大邸宅の執事用に建てられた家を購入して引っ越した時にはローズマリーのアドバイスに従ってバーンズリーから運んできた植物を植えてD自身の庭を創ったのです。
ローズマリーがウェールズのボドナントガーデンからインスピレーションを受けて作ったキングサリのトンネルは、Dの家ではトンネルとまでは行きませんが、黄色の花のそばを通ると太陽が突然近くに来たように明るくなります。
そのうちにガーデン好きのSとK夫妻が隣に越してきてすっかりDと意気投合。ついでに私もフリーのガーデン・ライターでもあるSともお付き合いが始まったというわけです。今では両方のガーデンを仕切る生垣の間の一部を取り去ってクランブル(SとKの猫)が簡単にDの庭にも遊びに来れるようにしています。もちろん人間も出入り自由です。
Kはキッチンガーデンの隣にある100数十年前に豚小屋として建てられた小屋をサマーハウスにすると言って現在作業が進んでいます。新しいサマーハウスには床暖房も入れるとかかなり本格的。イギリス人の日曜大工は有名ですが、コッツウォルド石でできた古い豚小屋を改築するのは大変そう!
そして今回の訪問のハイライトはDの庭にあったブラックバードの巣 でした。運よく母親がいなかったのでちょっと覗かせてもらいました。
卵からかえってまだ数日でしょうか?でもちゃんと3羽とも息をしていて生命の凄さを感じました。他の鳥や猫、キツネに狙われずちゃんと巣立っていきますように。
帰りがけにDから庭の花の苗を沢山いただきました。彼の庭の植物のほとんどがバーンズリーハウスから贈られたものなので、私の家にもバーンズリーハウスの花の子孫が咲くと言うわけです!成長が楽しみです。