5/16/2016

ロンドンの今後

2016年に入り、イギリスでは色々な出来事が起こっています。デイヴィッド.ボウィーに始まり、超有名な歌手、コメディアン、手品師、プレゼンター、俳優が次々と亡くなり、その数のあまりの多さにテレビのニュースを見る度に「また?」の連続です。

6月のEU脱退か残留かの国民投票で、新聞でもテレビでも賛成派と反対派がものすごい勢いで討論しています。保守党にしても労働党にしても同じ党でも意見はまっぷたつに分かれ、それは正に戦いです。キャメロン首相や、労働党党首のコービン氏が残留を訴えるのに対し、つい先日までロンドン市長だったボリス.ジョンソンは保守党でありながら熱心に離脱説をとなえています。

かと思えば、イギリスは大金持ちには魅力の国だそうで(教育、税制、レジャーなどにおいて)、世界一大金持ちが多い国と言われています。その人たちは更に外国に貯金をしていてイギリスでの税金を免れています。ほとんどイギリスに住んで、仕事をしていながら「外国に住んでいる」という名目で税金を支払っていない超大金持ちが女王から勲章をもらったり....イギリス国民もうんざりの問題が沢山明るみに出てきました。

なんかこの国は変になってきました。私が最初にこの国に来た時は、確かに不況の真っただ中でした。それでも社会福祉は「ゆりかごから墓場まで」という言葉通り、他の国よりは進んでいましたし、人間が生きていくための最低限の生活はほぼ保障されていました。お金がなくても人々はそれなりに楽しいことを見つけて暮らしていた気がします。

それがサッチャーさんの時代に景気が回復し、更に新労働党を築いたトニー.ブレア(労働党と新労働党は全く違ったポリシー)のころから徐々に「イギリスはどうなっちゃったの?」と思い始めました。

昔のイギリス人が持っていた価値観は確かに変わりました。British Valueって一体何?そこから考えるようになりました。企業は短期間に大金を稼ぐことに一生懸命です。ロンドンは開発が進み、高級住宅が建ち始めました。19世紀中ごろから親しまれてきたレストランが、家賃が払えなくなり、閉店しました。

さてと、ここまではボヤキです。ここからはそんなイギリスに私が最近感じた光をお伝えします。

まず、ロンドン市長です。カリスマで野心家のボリス.ジョンソン(彼の目指すところは首相!?)に代わり、今度は労働党のサディク.カーンが当選しました。保守党候補のザック.ゴールドスミスは大富豪の息子、方やサディク.カーンは移民でバスの運転手だった父を持つ労働者階級出身です。そして結果はご存知のようにカーン氏が圧勝しました。ロンドン史上初のイスラム教徒の市長が誕生したのです。

ボリス.ジョンソン





サディク.カーン




これって、素晴らしいことと思います。肌の色、宗教に関係なく人間として信頼を置く人に投票するってなかなかできないことです。それを実現したロンドン市民に声援を送ります。これこそがBritish Valueではないでしょうか?だからこそ、16歳で学校を出て社会人になったメジャーさんが首相になり、ビートルズ、ミニスカート、パンクファッションなどが誕生した気がします。肩書云々ではなく、その人の真の能力を大切にする価値観です。

ゴールドスミスが敗れた理由のひとつにフェア.プレイのことが挙げられています。彼はカーンがイスラム教の過激派と交流があるような写真を使って、市民の票を稼ごうとしました。全く根拠のないことです。イギリス人にとってはスポーツでもなんでもフェア.プレイが一番大切なことです。

そして忘れてはならないのが新しいもの、外国人、違う文化を受け入れる心の広さです。必要な伝統、習慣を守りながら時には新しいものを取り入れる心です。

ロンドンの街中に出る度に、新しい建物がどんどん建ち、人々は前よりも早いスピードで歩いています。どこに行っても工事をしていて車の渋滞もあちこちで起こっています。空気も汚れてきました。私には徐々に住みにくいロンドンになっています。でもその反面、新しい市長がどんなことをロンドンにしてくるのか、期待と興奮を感じます。それを実際に体験できないのは、すでにロンドンからの引っ越しを決めた私にとっては、ちょっと淋しい気もします。