10/20/2016

えっ? 最悪の食事?

私の土曜の楽しみのひとつはタイムズ紙の別冊を読むことです。




その中でも毎週心待ちにしているのがジャイルズ.コレンが書いているレストランに関する連載記事。彼の評価は時には「うん、うん、確かにそう!」と同感することもあれば「そんなにおいしいとは思えないけど?」と彼の味覚に疑問をもったり。食に関してはひとそれぞれの好みの違いですから評論家の意見をそのまま受け入れるのは危険です。それでは私にとってジャイルズ.コレンの記事が何故面白いかと言えば、正直な気持ちを堂々と適切な文章で表現しているから。

先週の記事の見出しは「今まで世界中のレストランで食べた食事の中で最悪のもの」です。

オックスフォードの中心にあるランドルフ.ホテルは昔から有名で、そのヴィクトリアン.ゴシックの外観もさることながら大きなシャンデリアがぶらさがるダイニングルームは「ああ、イギリス!」と思わせる雰囲気で、アガサ.クリスティやインスペクター.モースなどのテレビドラマでも撮影に使われたホテル。おそらくはオックスフォードでは一番有名なホテルではないでしょうか?

私はもう10年以上も泊まっていませんが、5年くらい前でしょうか?お客様とアフタヌーンティをする機会がありました。確かにその内容は別に特別なわけでもなくごく普通のアフタヌーンティで内容もはっきり覚えていません。

でも、この記事を読んで思ったことがあります。「そう、ランドルフ.ホテルに限らず最近のイギリスは残念ながらこうなってしまった。」ということ。


 

「イギリスに行ったら朝食を一日三度食べなさい。」と言われるほどイギリスの朝食はおいしいと言われていますが(現在は健康のことを考えれば一か月に一回くらいがいいかも?)、コレンはその朝食の事を書いていました。




‘ 出された朝食を見て思わず笑ってしまった。....てっきり間違いと思いレジに行って間違いを指摘したら、「間違いではありません。それでいいのです。」と......ベーコン一枚、トマト半分、目玉焼き一個、ソーセージ1本、マッシュルーム7個、冷凍のハッシュブラウン一個だけ...’


要は、内容ではなくこの朝食が(それ以外に温かいものを待っている間に食べるセルフサービスのシリアルやヨーグルト、紅茶、ジュースなども含むのですが)21ポンド50ペンスということにあると思います。

もしこれが5ポンドだったら誰も文句は言わないはず。ひょっとしたら夕食も食べられる料金でこの内容だからコレンは怒ってしまったのだと思います。






「世界で一番住みやすい国」と信じていた私にとって、ここ数年のイギリスはだんだん居心地が良くなくなってきました。それでも「世界中でどこの国に住みたい?」と言われればやっぱりイギリスを選ぶでしょうけど。(ブータンにも住んでみたいと思うこともありますが)

何故でしょう?それは、イギリスでの幸せな暮らしの中でのプライオリティがずっと私が信じてきたものから徐々に遠ざかっているように思えるからです。いかにして収入を増やすか、いかにして社会的な地位を高めるか、いかにして有名になるか.....そんなことが先にたって個人それぞれ違うはずの「幸せな人生を送るために」の要因の順序がずいぶん変わってきたように思います。

特にビジネスに関してはいかにして短期間にお金を儲けるかが先に立つようになったことはあちこちで感じられます。

レストランに関してもそうです。だからコレンが21ポンド50ペンスも払って「ベーコン1枚、マッシュルーム6個....」と怒った(怒る前に笑ってしまったそうですが)気持ちがよくわかります。

アフタヌーンティに関しても同じです。ロンドンのホテルではひとりにつき60ポンド請求するところが珍しくなくなりました。しかも以前は「お好きなだけ居てください」でしたが、今は2時間限定のところばかり。アフタヌーンティとは「時間を気にせずにゆっくり楽しむ」が原則だったのではないでしょうか?

ホテルはアフタヌーンティブームで「これはビジネスになる!」と、法外な(私にはそう思えます)料金を設定し始めました。

ああ、昔のイギリスは一体どこに行っちゃったのでしょうか?それでもロンドン以外ではまだBritish Valueが残っていると信じていましたが、ジャイルズ.コレンの記事ではオックスフォードもロンドン化してきたことを知り、残念に思います。これからはサービス業が人ではなく、お金が先立つようになってくるのでしょうか?

と、皆さんまたまた私のボヤキにお付き合いくださってありがとうございました。それでもまだまだBritish Valueが残っているところは沢山ありますから、イギリスにいらっしゃったらそういうところを是非見つけてください。ポンドがドッカーンと下がったことで少しは「真のサービスとは?」と考えるレストラン、ホテルに期待します。