12/08/2018

クリスマスとブレグジット


今年のクリスマスは例年と違います。心の底から楽しい雰囲気になれません。 そう、ブレグジットのことです。

国民投票でイギリスがEUを離脱するかどうかの結果が出る直前に、北アイルランド出身の同僚とお茶を飲む機会がありました。彼はいつになく浮かない顔で、「離脱することになったら北アイルランドは大変なことになる。」と心配していました。

正直、そのころ私は離脱に関する知識もあまりなく、「離脱なんか考えられないからそれほど心配しなくていいんじゃない?」と言っていました。ところが彼の心配することが本当になったのです。

国民投票で離脱の結果が出た時に、真っ先に頭に浮かんだのはこの同僚のことでした。あれからもうすぐ2年半が過ぎようとしている現在、来年3月の離脱に向けてイギリスがどのような形でEUを離れるかについてのメイ首相とEUの代表者はやっと合意に達して一件落着・・・と思いきや、今度は合意した内容がイギリスの議会で反対が多く、大変なことになっているのです。ここ数日内でメイ首相が国会で議員を説得出来るかどうかが鍵です。今年中にはある程度合意に達し、離脱に向けて歩み出さなければいけないというのにどうもその様子が感じられません。焦りが見え出し、もしかしたらはっきりした合意もなく、このままズルズルと新年を迎えるのでしょうか?

それも、特に国民投票時にはそれほど囁かれなかった北アイルランド問題が焦点です。正に同僚が心配していたことです。アイルランドはグレイトブリテン島とは海を隔ててお隣さん同士ですが、現在は北と南に分かれていて南は共和国で(今回の離脱には直接関係はありません)、北はイギリスに属していますので離脱が決まっています。そこで北と南の間の国境を(人間だけではなく物質の移動に関する国境も含めて)どうするかが問われているのです。

じゃあ、北と南の国境をそのまま維持すればいいと思われるでしょう。ところがここに、両国間の複雑な関係があるのです。今は、北と南の間は国は別でも自由に行き来できる状態です。

1801年に成立した連合法によって、アイルランドは連合王国の(イギリス)一部となりましたが、1922年、アイルランドは独立戦争の結果、再び独立を勝ち取りました。それでもプロテスタントの北側にはUK残留希望が多く、どうなったかと言えば・・・南北が分かれることになったのです。こうして同じキリスト教徒でもカトリック教徒の多い南(アイルランド共和国)とプロテスタント教徒の多い北(北アイルランド)は別の国になったのですが、南北の合併を望む人たちとの間でいざこざが絶えず、1998年の和平合意まではテロ行為も頻繁に行われ、そのために30年の間に3000人以上が亡くなっています。

そもそもイギリスがEUに加盟したひとつの理由は(そして大きな理由)北アイルランドと南アイルランドの問題を緩和することもあったはず。今は、北と南は自由に行き来できるようになっているのが、離脱後はそれができなくなる可能性も出てきました。つまり北と南が再び完全に分かれてしまうのです。その結果、和平条約以前の問題が再び勃発する可能性も出てきます。同僚は正にそれを心配していたのでした。

そんな危なっかしいイギリスの現状ですが、確実なのはクリスマスが着々と近づいていること。「クリスマスどころではない。」というより、「こんな時だからこそクリスマスで気を晴らそう」という雰囲気です。ブレグジット問題で不安な暮らしの中、クリスマスの飾り付けを見ると、確かに少しは気が晴れるのは私だけではないようです。


先日ツアーで泊まったホテルで。









私の住む町にも。




そして私の家にも・・・・とはウソで主人が毎日行く食品店兼コーヒーショップ。









我が家は・・・・・実はまだ何もしていません。クリスマスツリーは今週末にでも。イギリスでは年に一番の祝日に当たるクリスマスです。今年は日本から妹も参加して我が家では8人が集まります。出たり入ったりで結局全員一緒の時間はクリスマス当日のクリスマスディナーのほんの数時間です。でもその数時間は家族としての一番大切な時間なので、今から準備をしなければなりません。

ブレグジットがスムースにできるように、今年中にはなんとか形になることを皆願っていますが、どうもそう簡単には行かない様子。でも心配しても仕方ありません。